2019年5月29日付の報道は、私たちの住まいやオフィスに欠かせない、石こうボードの出荷動向が、当時の建設市場の複雑な状況を映し出していることを伝えました。石こうボード工業会がまとめた2018年度の国内出荷量は5億150万平方メートル。工業会は、2019年度もこの5億平方メートルという水準を維持したいとして、需要喚起に努めていました。
石こうボードは、住宅の壁や天井などの内装材に使われる**「縁の下の力持ち」のような建材です。その用途の約7割が住宅向けであるため、出荷量は新設住宅着工戸数の動きから4~5カ月遅れて増減しやすいという特徴があります。2019年1月から3月までの住宅着工戸数が前年同期比5.2%増となったことが、2019年度上半期の石こうボード出荷にプラスの追い風になると見られていました。これは、同年10月に予定されていた消費増税を前に、住宅購入の駆け込み需要**が発生したことによるものと分析されています。
一方で、非住宅(ビルやホテルなど)の分野では、2年ほど前の着工動向が影響します。2017年の非居住用着工床面積が増加していたことから、首都圏の再開発や東京オリンピック・パラリンピック関連の大型案件が、2019年は内装仕上げの段階を迎えることになり、年間を通して需要を底支えすると期待されていました。SNS上では当時、「東京の再開発がこの年は内装ラッシュか」「増税後の住宅の冷え込みを五輪関連が救う構図だ」といった、市場の構造に対する様々な声が上がっていました。
コラムニストとしての私の意見ですが、国内の建設市場が長期的な縮小傾向にある中で、この「5億平方メートル」という水準を維持できるかどうかは、当時の日本の建設業界全体にとって重要な試金石でした。消費増税によって2019年度下半期に住宅向け需要が停滞する可能性が高かったため、非住宅分野の特需が不可欠な状況でした。石こうボードの需要動向は、単なる建材の販売量だけでなく、日本のマクロ経済が抱える構造的な課題、すなわち内需の波とイベント頼みの成長を乗り越えられるかどうかのバロメーターだと言えるでしょう。
コメント