新しいビジネスの創出と日本経済の再生に向けて、新興企業への注目がかつてないほど高まっています。一方で創業直後の若い企業は、資金や人材の確保という大きな壁に直面し、事業を軌道に乗せる前に撤退を余儀なくされる事例が後を絶ちません。
こうした市場の失敗を補うため、行政による資金援助や手厚いサポートの必要性が長年叫ばれてきました。市場の自浄作用だけに委ねていては革新的な取り組みが生まれにくいため、公的な関与によって創業活動を強力に後押しすべきだという考え方が定着しています。
SNS上でも「挑戦する企業をもっと応援してほしい」「資金難でアイデアが埋もれるのはもったいない」といった前向きな声が目立っています。しかし、すべての起業家に対して一律に資金を分配する政策には、専門家から疑問の視線が向けられ始めています。
実は一般的なスタートアップの多くは、必ずしも斬新な技術革新をもたらすわけではなく、新たな雇用の創出や経済価値の創出にも繋がりにくいという実態が判明しているのです。無差別な給付は、かえって貴重な公的資金の散逸を招く恐れがあります。
真に経済を揺り動かすのは、高度な知識や実績を備えた起業家(=高い「人的資本」を持つ人材)が率いる、イノベーションに意欲的な企業です。ここでいう「人的資本」とは、創業者自身が培ってきた専門的な知見や実務経験、人的ネットワークなどの価値ある知覚的資産を指します。
関西学院大学の加藤雅俊教授らが2020年04月29日までにまとめた実証研究によれば、優れた人的資本を備えた企業ほど研究開発に積極的で、新技術を生み出す確率が突出して高いことが証明されました。イノベーションの鍵は、まさに質の高い経営陣にあります。
しかし深刻なことに、ポテンシャルの高い企業ほど大規模な資金が必要となるため、需要と供給のミスマッチが解消されていません。どれほど優れたアイデアがあっても、開発資金が底を突いてしまえば、社会に変革を起こす夢は潰えてしまうでしょう。
私自身の視点としても、これからの国による支援策は単に起業数を増やす「数の勝負」から脱却すべきだと強く感じます。高い志と能力を持つ有望なスタートアップを厳選し、集中的にリソースを投入する「質の追求」こそが、日本経済の起死回生に不可欠なのです。
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