📱テレビ新時代へ! NHKネット同時配信拡大が問うメディア競争の健全性と未来戦略

2019年5月31日に、NHK(日本放送協会)の全テレビ番組を放送と同時にインターネットで配信することを可能にする改正放送法が成立いたしました。これは、スマートフォンなどの携帯端末で番組を視聴したいという、まさに時代の切実なニーズに応える大きな一歩と言えるでしょう。テレビ離れが進むなか、特に若年層の新たな視聴者を獲得したいというNHKの意向が背景にあり、この法改正を受けて2020年3月までに「常時同時配信」がスタートする見込みでございます。

しかしながら、この大きな変革には残された多くの課題が存在しており、NHKをはじめとする放送業界全体がその解決を急ぐ必要がありましょう。SNS上では「ついに来たか!これでどこでも見られるようになる」「受信料の使い道が広がるのは歓迎」といった声がある一方で、「民業圧迫にならないか心配」「ただでさえ巨大なNHKがさらに肥大化するのでは」といった懸念の声も多く見受けられます。

私は、今回の法改正は、視聴者にとって利便性が向上するという点では意義深いと認めますが、NHKの事業拡大には極めて慎重であるべきだと考えます。NHKは、国民から安定的に徴収する受信料によって、年間7,000億円規模の巨額な収入を得ております。このような盤石な基盤を持つ組織が、ネット事業を野放図に拡大させれば、他のメディアとの健全な競争環境が歪められてしまう恐れがあるからです。

放送法における公共放送という特別な立ち位置や、多岐にわたる番組制作能力は称賛に値しますが、多様なメディアが存在してこそ、視聴者の皆さまが得られる情報の多様性が保たれるものです。その多様性が損なわれることになれば、最終的に損失を被るのは私たち視聴者自身となってしまうでしょう。したがって、NHKには競争環境を尊重する自律が強く求められます。

これまでNHKは、ネット業務に充てる費用を受信料収入の2.5%までとする上限ルールを設定し、この範囲内で運用を続けてまいりました。ところが、今回の常時同時配信の実施にあたり、この上限をどうするのか、具体的な方針が明言されていない状況でございます。ネットの利用が、あくまで放送の役割を補完する「補完業務」として位置づけられてきた経緯を踏まえれば、無制限な拡大を防ぐためにも、合理的な費用上限を定めることが不可欠であります。

また、NHKはネット事業の収支を、既存の放送事業とは明確に分離して開示するなど、経営の透明性をさらに高める必要に迫られています。国民の受信料で運営されている以上、その使途に対して視聴者が納得できる説明責任を果たすことは、公共放送としての責務と言えるでしょう。この透明性の確保は、不要な疑念や反発を避けるための重要な防波堤となります。

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地方民放の生き残り戦略と国の支援策

一方で、今回のネット同時配信の波は、民放、とりわけ地方の放送局の経営にも大きな見直しを迫っています。ネット利用が進むと、キー局と呼ばれる東京などの主要テレビ局が制作した番組を、全国の視聴者に直接配信することが容易になります。これは、これまでキー局の番組をネットを通じて地域に届けてきた地方局の収益モデルにとって、間違いなく大きな逆風となるでしょう。

地方局は、地域に密着したきめ細やかな情報を住民に届けるという、非常に大切な役割を担ってきました。しかし、人口減少といった社会構造の変化もあり、その経営環境はすでに大きく変わりつつあります。この難局を乗り切るためには、単一の企業の枠を超えた連携を強化し、投資負担を軽減するとともに、地方局ならではのコンテンツ制作能力を高めて、そのコンテンツを全国や世界に販売していくといった、攻めの経営戦略が課題となります。

地方局がこうした多様な経営戦略を描き、実行しやすくするために、国も制度面から強力に後押しすべき時期に来ていると私は考えます。現在、放送免許は原則として県ごとに交付される仕組みとなっていますが、この硬直的な制度の見直しなどが喫緊の検討課題になることでしょう。広域化や柔軟な免許制度の導入は、地方局がデジタル時代に即した新たなビジネスモデルを構築するための大きなテコとなるに違いありません。

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