2019年6月21日、政府は国の経済財政運営の羅針盤となる「経済財政運営の基本方針」、通称**「骨太の方針」と、「成長戦略」を閣議決定する見通しです。これは、2012年12月に発足した第2次安倍政権以降、7回目となる重要な政策パッケージのとりまとめとなります。特に今回は、10月に予定されている消費税率10%への引き上げ**を控えており、その動向は多くの国民の関心を集めています。
「骨太の方針」は、年末の予算編成に向けた国の政策の基本的な方向性を指し示すもので、「成長戦略」は、アベノミクスを構成する「大胆な金融政策」と「機動的な財政政策」に続く**「第3の矢」としての位置づけを持っています。世界経済の減速懸念が強まる中、政府は増税を明記しつつも、経済状況によっては「追加の経済対策」**に踏み切る可能性を滲ませており、その内容に注目が集まっています。政府としては、この後に行われる20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で、議長国として世界経済の持続的な成長に向けた議論を主導したいという強い考えがあるようですね。
巷では、消費税増税をめぐり、安倍晋三首相が「リーマン・ショック級の出来事がない限り引き上げる」と表明していたことから、与党内には増税延期を掲げて衆院解散に踏み切るのでは、との憶測も飛び交っていました。しかし、夏の参議院選挙と衆議院選挙を同時に行う衆参同日選の実施が見送られる方向となったことで、増税延期の可能性はほぼなくなったと判断されているようです。骨太方針の素案には、「海外経済の下方リスクが顕在化する場合には機動的なマクロ経済政策を躊躇(ちゅうちょ)なく実行する」と記されており、これは経済が鈍化したとしても増税方針は堅持しつつ、同時に、いざという時のための追加経済対策への道筋をつけておくという、政府の周到な布石だと言えるでしょう。
最低賃金「時給1000円」の早期実現へ:内需下支えと社会保障の担い手増加策
消費税増税への懸念を払拭し、内需をしっかりと下支えする柱の一つとして、政府は最低賃金の引き上げを打ち出しました。今回の骨太方針では、「より早期に全国平均で時給1000円に引き上げる」という目標が掲げられています。これまでの過去3年間の骨太方針では「年3%程度引き上げ、全国平均1000円を目指す」とされていたのですが、今回の「より早期に」という文言は、目標達成のペースを加速させる強い意志の表れと言えるでしょう。現在の全国平均は時給874円(※記事制作時点)であり、年3%程度のペースでは2023年に到達すると見られていますが、政府はこの時期を前倒ししたい考えです。
ただし、中小企業の団体などからは、急激な賃上げ目標の設定に反対する声も根強くあるため、具体的な引き上げ幅の明記は避けられています。その代わり、賃上げに積極的な企業への減税の拡大や、雇用保険料を低く抑える特例措置の延長などが検討されており、企業側の負担軽減を図りながら、全体としての賃上げを促す狙いがあるようです。
また、社会保障制度の持続可能性を高めるため、社会保障の支え手を増やす政策も重要な柱に据えられています。具体的には、女性や高齢者の就労を促すことで、社会保障制度を維持しようという試みです。その一つが、**「勤労者皆社会保険制度」**の実現を掲げ、厚生年金の適用を広げる方針です。これに加えて、成長戦略と連動する形で、高齢者の就労促進策も盛り込まれました。企業に対して、**70歳までの就業機会の確保を「努力義務」**とする法改正を明記し、定年廃止、定年延長、再就職支援、起業支援など、7つの選択肢から企業に選んでもらうことで、意欲ある高齢者が働き続けられる受け皿づくりを急いでいます。
さらに、就職氷河期世代、つまり30代半ばから40代半ばの方々の就職支援も新たに始まります。この世代はバブル崩壊後の経済状況下で就職活動を行ったため、非正規雇用などで苦労されている方も少なくありません。政府は、今後3年間で正規雇用の同世代を30万人増やすという具体的な目標を掲げ、非正規雇用の方など100万人を対象に、資格取得などの支援を3年間で集中的に行う方針です。この支援策は、長年の課題であった世代間の格差是正につながるものとして、私は大いに評価すべきと考えます。
参院選を控え、痛みを伴う改革は先送り:増税後の議論に注目
一方で、国民に痛みを伴う社会保障改革については、夏の参院選への影響を懸念し、先送りする判断がなされました。具体的には、75歳以上の高齢者の病院窓口負担や介護保険の利用者負担の引き上げなどが検討課題でしたが、今回は見送られています。年金制度に関しても、受給開始年齢を70歳以降でも可能とする制度改正は盛り込むものの、一律での開始年齢引き上げは見送られることとなりました。
2012年に消費税増税と社会保障の充実をセットで決めた**「社会保障と税の一体改革」は、10月の消費税率10%への引き上げをもって、一つの区切りを迎えます。しかし、これで税と社会保障の議論が終わるわけではありません。JPモルガン証券の阪上亮太チーフ株式ストラテジストも指摘するように、「社会保障改革は喫緊の課題」**であり、政府は改革の道筋だけでも早急に示す必要がある状況です。税と社会保障に関する本格的な議論は、今秋以降に再び熱を帯びてくるでしょう。私たちは、今後の議論を注視し、政府の政策の方向性について、常に冷静な目を向けていく必要があるでしょう。
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