2019年6月の株主総会シーズンを前に、機関投資家と上場企業の間の対話が、かつてないほど活発化しています。企業年金などを運用するりそな銀行の責任投資グループリーダー・松原稔氏のもとには、上場企業の役員たちが次々と訪れ、自社の議案に対する「感触」を探る様子が見られました。松原氏の元には、5月23日だけで5社、直近3カ月では約100社もの企業が面談に訪れており、その熱量の高さがうかがえます。
こうした状況が生まれた背景には、2014年に導入されたスチュワードシップ・コードという機関投資家向けの行動指針の存在があります。これは、投資家に対して、投資先企業の中長期的な成長を促すための責任を明確にしたものです。このコード導入を機に、機関投資家は議決権行使の基準を詳細に開示し、その内容を年々厳格化。企業に対して、より具体的な改善や対応を求めるようになったのです。
三井住友トラスト・アセットマネジメントのスチュワードシップ推進部長・福永敬輔氏は「取引先かどうかは関係ない」と断言しています。実際、同社はグループで取引のあるコカ・コーラボトラーズジャパンホールディングスが同年3月に開催した株主総会で、社外役員の独立性を問題視し、その選任案に反対票を投じるという毅然とした姿勢を見せています。同年1月〜3月の総会における取引先企業の議案に対する反対比率は21%に上り、非取引先を含む全体の19%を上回っています。これは、もはや「物言わぬ株主」はいない、ということを明確に物語っていると言えるでしょう。
特に注目すべきは、株価指数などと連動して機械的に株式を売買するパッシブ運用の運用会社までもが、「物を言う」存在へと変化していることです。その象徴的な事例が、2017年3月に米ウォール街に設置された銅像「恐れを知らぬ少女」です。この銅像を設置したのは、米国のパッシブ運用大手ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズで、これは世界の上場企業に対し、女性役員の増加を強く求めるという、同社の明確な意思が込められています。
同社は、2018年から取締役に女性がいない日本企業281社に対し、女性の起用を強く訴えかけました。その結果、43社が要請に応じ、さらに11社が近いうちに起用する約束をしています。一方で、女性役員がいないことを理由に、同年181社の役員選任案には反対票を投じるという厳しい態度も示しています。同社アジア太平洋責任者のベンジャミン・コルトン氏は、「日本は経営人材としての女性の数が少ない」と指摘し、単なる採用拡大だけでなく、企業の人材育成に対する意識改革まで求めている状況なのです。
私見ではありますが、これは日本企業にとって極めて健全な変化だと捉えています。かつては、安定株主として黙って賛成票を投じてくれた「身内」の機関投資家も、今や中長期的な企業価値向上という視点から、厳しい評価を下す「黙さぬ株主」へと変貌を遂げました。派手な動きで知られる物言う株主だけでなく、こうした巨大な運用会社も動いたことで、企業はあらゆる株主と真摯に向き合わざるを得ない状況に置かれています。この変化は、日本企業のガバナンスを強化し、持続的な成長を実現するための大きな契機となるでしょう。
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