米国の半導体大手であるマイクロン・テクノロジーが、日本国内での先端DRAM(ディーラム)の量産体制を一段と強化しています。DRAMとは、主にコンピューターやスマートフォンなどの電子機器で、一時的にデータを記憶しておくために使われる半導体メモリのことで、「Dynamic Random Access Memory」の略称です。同社は、2013年に買収した旧エルピーダメモリから引き継いだ広島工場(広島県東広島市)において、このたび新棟を建設し、生産の核となるクリーンルームを10パーセント拡張しました。クリーンルームとは、空気中の微粒子や塵を極限まで除去し、半導体の製造に最適な環境を維持する特別な空間のこと。この増強は、既存の生産能力を維持しながら、さらに高度なDRAMの量産を実現するための体制整備といえるでしょう。
この重要な動きについて、来日したサンジェイ・メロートラ最高経営責任者(CEO)に話を伺いました。メロートラCEOは、広島工場が単に最先端のDRAMを大量生産する拠点であるだけでなく、米国との緊密な連携のもと、研究開発の中心的な役割も担っていることを強調されています。今回の拡張は、まさに先端DRAMの量産に必要なインフラを整えるためのものであり、広島で確立された量産技術が、やがて世界中のマイクロン拠点へと展開されるという、非常に重要な流れができていると語っています。
さらに、メロートラCEOは、日本を半導体生産とイノベーションにおいて豊かな歴史を持つ国として高く評価し、マイクロン社内で今後も重要な位置を占め続けるとの見解を示しています。日本には現在3,800人の従業員が在籍しており、特に広島工場では過去1年間で中途採用を含む400人の技術者を採用しています。これに加え、今後3年間で500人を新卒として迎え入れる計画があり、神奈川県の橋本には設計拠点も設けていることから、日本における人材と技術への投資意欲の高さがうかがえます。日本の高い技術力と勤勉な人材が、マイクロンのグローバル戦略にとって不可欠な要素であることは間違いないでしょう。
半導体メモリの市況については、長期的な視点で見ると、需要はますます高まるだろうとメロートラCEOは分析しています。その背景には、次世代高速通信規格である5Gや、あらゆるモノがインターネットにつながるIoT、そして大量のデータを扱うクラウドコンピューティングの普及、さらには未来の自動運転技術や最新のスマートフォンなど、膨大な量のメモリを必要とする新たな技術や製品の登場があります。
特に、人工知能(AI)向けのサーバー市場は、現時点での規模は小さいものの、従来のサーバーと比較して6倍ものDRAMと、2倍のSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)が必要になる見込みです。SSDとは、データを電気的に記録する半導体を使用した記憶装置で、ハードディスクよりも高速なデータ読み書きが可能です。また、未来の自動運転車は、100ギガバイト(10億バイト)のDRAMと、テラバイト(1兆バイト)単位のSSDを使用することになるという具体的な数字が示されており、これからの需要の爆発的な拡大を示唆しているといえるでしょう。
一方で、短期的な状況として、現在は供給過剰の状態にあり、取引価格が弱含んでいるという認識も示しています。しかしながら、メロートラCEOは、前述のような新しい需要が現実のものとなれば、業界の健全化が進むと強く見通しています。したがって、この先、数四半期にわたって需給環境は改善に向かうだろうとの楽観的な見方を述べています。
また、米政府が中国の華為技術(ファーウェイ)に対して事実上の禁輸措置を発動したことに関しては、「現時点で話せるのは、当社はビジネスを行うすべての国の法律を遵守しているということだ」と慎重な姿勢を示されました。そのうえで、米中両国が貿易をめぐる相違を乗り越え、合意に達することを期待しているとの考えを表明しています。合意が実現すれば、同社の技術や製品をもって顧客を最大限サポートしたい意向です。
さらに、マイクロンは中国のほか、台湾、シンガポール、マレーシア、そして日本に工場を多角的に展開しており、米国の対中追加関税の影響についても言及しています。この追加関税は、中国から米国への輸出が対象となるため、工場を複数国に分散させることで、影響を最小限に抑えられている状況とのこと。2019年6月18日時点では、中国から米国への出荷は行っておらず、主にその他の海外顧客向けに供給していると説明されています。
編集者として私見を述べさせていただきますと、マイクロンが旧エルピーダメモリの遺産を引き継ぎ、日本の広島を先端技術開発と量産の要として位置づけていることは、日本の半導体産業の将来にとって極めて心強いニュースです。短期的な市況の波はあれど、AIや5G、自動運転といったメガトレンドが牽引するメモリ需要の巨大なポテンシャルは疑う余地がありません。特に、AIサーバーや自動運転車におけるDRAMとSSDの消費量の桁外れの増加予測は、まさにデジタル社会の未来図を鮮明に描き出しているといえるでしょう。この広島での積極的な投資と人材採用は、日本が世界の最先端半導体技術のハブとして再浮上する可能性を秘めていると確信しています。
コメント