ドナルド・トランプ米大統領が掲げる「アメリカ・ファースト(自国第一主義)」の外交戦略が、いま世界中で波紋を広げています。2019年10月6日、トランプ氏はシリア北東部からの米軍撤退を突如として発表しました。「米兵の血を一滴も流させない」という大義名分を掲げましたが、この決断は国際社会に大きな衝撃を与えています。
この撤退表明の直後、待っていたかのようにトルコ軍がシリアへの軍事侵攻を開始しました。これまで過激派組織「イスラム国(IS)」の掃討作戦において、米軍と肩を並べて戦ってきたクルド人勢力を、アメリカは事実上見捨てた形となります。この冷徹な対応に対し、SNS上でも「同盟国への裏切りだ」という厳しい批判が相次いでいます。
トルコのエルドアン大統領は、トランプ氏による「経済を破壊する」という警告すら意に介さず、強硬な軍事行動を強行しました。アメリカの威信が揺らぐ中で、これまで対立してきた国々がトランプ氏の姿勢を「弱腰」と見限り、次々と攻勢を強めています。かつての国際秩序が足元から崩れ始めていると言わざるを得ません。
同盟国を不安に陥れたホルムズ海峡の対応
アメリカの弱体化を決定づけたのは、2019年6月20日にホルムズ海峡で発生した米軍無人機の撃墜事件ではないでしょうか。イラン軍によるこの暴挙に対し、トランプ氏は当初「大きな間違いを犯した。座視しない」と強気の姿勢を見せていました。しかし、そのわずか数時間後には「故意ではなかった」とトーンダウンしたのです。
この優柔不断な対応は、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)といった中東の同盟諸国に「アメリカは守ってくれない」という不信感を植え付けました。実際、UAEはすでに独自でイランへ特使を派遣しており、アメリカを頼らない独自の外交へと舵を切っています。仲間の離反を招くリーダーの姿は、あまりに危ういものです。
こうした動きは中東に留まりません。中国もまた、米中貿易協議において毛沢東の「持久戦論」を引き合いに出し、徹底抗戦の構えを見せています。持久戦論とは、圧倒的な戦力差がある相手に対し、時間をかけて相手を疲弊させ勝利を掴む戦略を指します。トランプ氏の焦りを見透かしたかのような、長期戦の構えです。
北朝鮮の暴走とボルトン氏解任の代償
北朝鮮の動向も無視できません。2019年9月に強硬派のジョン・ボルトン国家安全保障担当補佐官が解任されたことで、北朝鮮はさらなる強気姿勢に転じています。対話よりも圧力を重視するボルトン氏がいなくなった隙を突き、ミサイル発射を繰り返すなど、トランプ政権の足元を完全に見透かしているようです。
2019年10月5日にストックホルムで行われた米朝実務者協議も、北朝鮮側の拒絶によって決裂に終わりました。アメリカが譲歩を見せない限り交渉には応じないという態度は、トランプ氏の外交がもはや行き詰まっている証左と言えるでしょう。相手を威圧するはずの外交が、いつの間にか翻弄される側に回っています。
私は、一国主義を貫くあまりに同盟の絆を軽視する姿勢は、巡り巡ってアメリカ自身の首を絞めることになると考えます。信頼を失った超大国が、再び世界をリードするのは容易ではありません。2019年11月1日現在、トランプ外交はまさに崩壊の淵に立たされており、この先の混乱は避けられない見通しです。
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