ワインの味わいを決める「アッサンブラージュ(ブレンド)」という工程は、本来熟練の職人だけが許された聖域のような仕事でした。しかし、そんな常識を打ち破る画期的な試みが注目を集めています。キッコーマンが展開する「ワインブレンドパレット」は、私たちが自分自身の手でワインの個性を創り出せる、夢のようなプラットフォームなのです。このプロジェクトを率いる禰宜田英司氏は、誰もが自由にワインを創造できる世界の実現を熱く語っています。
このサービスの特徴は、驚くほど直感的でクリエイティブな操作性にあります。パソコンやスマートフォンさえあれば、2019年11月15日現在、7種類の厳選された赤ワイン原酒から最大5種類を選び出し、5パーセント単位で絶妙な配合を調整できるのです。味の方向性は「ライト/フルボディ」「果実味/深み」という分かりやすい2軸のグラフで可視化されるため、初心者でも迷うことなく理想の一本をデザインできるでしょう。
さらに、自分好みのワインを仕上げる楽しみは中身だけにとどまりません。全10種類のスタイリッシュなデザインからラベルを選択でき、約3,000円(送料別)という手頃な価格で、世界に一つだけの作品が2、3週間ほどで手元に届きます。さらに、自慢のレシピをサイト上で共有したり、他の誰かが情熱を込めて創り上げたオリジナルワインを購入したりできる点も、SNS世代の知的好奇心を刺激する大きなポイントと言えます。
SNS上では、実際に体験したユーザーから「化学の実験みたいでワクワクする」「自分だけの特別なラベルに愛着がわく」といった熱い反響が相次いでいます。こうした反応は、単なる消費を超えた「創造する喜び」が現代人に求められている証拠でしょう。キッコーマンの東京本社や勝沼ワイナリーで開催されたワークショップには、すでに800人近いファンが駆けつけており、ワインを愛する人々の間で確かなムーブメントを巻き起こしています。
飲食店も注目!ブランドの絆を深める「共創」の新しいカタチ
この革新的な仕組みは、個人の愛好家だけでなく飲食業界にも新たな風を吹き込んでいます。「肉のヒマラヤ」や「シックスカレー」といった人気店では、顧客と一緒に創り上げたワインをオリジナルラベルで提供しており、お店とファンの絆を深める象徴的なアイテムとして活用されています。さらに、来月上旬にオープンを控える「ノムノ秋葉原店」では、提供される赤ワインのほとんどをこのシステムで生み出すという大胆な試みが始まります。
店舗に設置された体験キットを使えば、その場でお客さまがワイン作りに挑戦でき、それがお店の定番メニューに採用される可能性もあるそうです。これは専門用語で「マスカスタマイゼーション」と呼ばれ、効率的な生産と個別のこだわりを両立させる手法ですが、本サービスはさらに一歩踏み込んだ「ユーザー参加型開発」の理想形といえます。1本単位で生産できる柔軟性が、これまでにない顧客体験を支えているのでしょう。
編集者の視点から見ても、消費者が「選ぶ側」から「創る側」へと回るこの流れは、今後のマーケティングにおいて不可欠な要素になると確信しています。ブランドとは企業が押し付けるものではなく、顧客と共に育んでいくものだということを、キッコーマンの事例は鮮やかに証明しました。皆さんの身近な製品でも、消費者が輝ける「参加の余白」を見つけ出すことで、思いもよらない熱狂的なファンが生まれるかもしれません。
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