2019年11月18日から2019年11月20日にかけて、東京で農業と最新技術の融合をテーマにした「AG/SUM(アグサム) アグリテック・サミット」が開催されました。日本経済新聞社が主催したこのイベントでは、国内外の精鋭スタートアップ12社が独自のビジネスモデルを披露し、熱い火花を散らしました。特に注目を集めたのは、データの活用による効率化や、環境負荷の低い「植物肉」といった新しい食の形です。
コンテストで見事に「日経賞」に輝いたのは、兵庫県丹波市のサグリ株式会社と、アメリカのリプレニッシュ社でした。2018年6月に設立されたサグリは、人工衛星から得られるデータを解析し、農地のポテンシャルを可視化する技術を持っています。これは、これまで信用力の把握が難しかったインドなどの小規模農家に対し、金融機関が適切な融資を行うための重要な判断材料となります。データが農家の未来を救う「信頼の証」になるという、非常に意義深い取り組みと言えるでしょう。
一方のリプレニッシュは、カット済みの野菜や果物が入った専用容器をセットするだけで、わずか1分でスムージーが完成するシステムを提案しています。この利便性は日本のコンビニエンスストアでも既に試験導入されており、忙しい現代人の健康需要を的確に捉えています。SNS上でも「手軽に本格的な栄養が摂れるのは嬉しい」「オフィスにあれば最高」といったポジティブな反応が広がっており、食のインフラを刷新する可能性を秘めています。
食料危機を救う「代替食品」と驚きのインセクテック
世界的な人口増加に伴い、将来的なタンパク質不足、いわゆる「プロテイン・クライシス」への懸念が高まっています。会場ではこの課題に対し、マレーシアのフューチャー・フーズが植物原料の「人工豚肉」を、アメリカのアトモ・コーヒーが豆を使わないコーヒーを披露しました。気候変動で従来の農産物が手に入りにくくなる未来を予測し、科学的なアプローチで「味と香り」を再現する試みには、来場者からも驚きの声が上がっていました。
さらに、次世代の栄養源として「インセクテック(昆虫テクノロジー)」にもスポットライトが当たりました。コオロギを原料としたプロテインバーを展開するバグモや、東南アジアで飼料生産を行うエコロギーなどが登壇し、環境負荷の低い新たなたんぱく源としての可能性を強調しました。昆虫食に対する心理的なハードルはまだあるものの、効率的な生産体制の構築は、持続可能な社会を実現するための鍵となるはずです。
日本の農業が抱える課題と「スマート農業」への期待
わが国の農業に目を向けると、担い手不足は極めて深刻です。2018年の統計によれば、農業従事者は175万人まで減少し、その7割が65歳以上という現実に直面しています。この状況を打破するために期待されているのが、AIやIoT(モノのインターネット)を駆使した「スマート農業」です。例えば、イナホ株式会社が開発した自動収穫ロボットは、画像認識技術によって熟した野菜だけを見極めて収穫し、人の手による重労働を代替します。
また、水中ドローンで漁業を支援するフルデプスや、空からの画像解析で肥料の最適化を図るオプティムなど、テクノロジーの波は確実に現場へ浸透しています。ただし、現場からは「ITサービスに比べて開発に時間がかかり、資金調達が難しい」という切実な声も漏れていました。優れた技術を社会実装するためには、単なるデータの取得に留まらず、生産者がしっかりと利益を上げられるマーケティングまで含めた、エコシステム全体の支援が必要不可欠だと私は強く感じます。
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