日本銀行仙台支店は2019年12月13日、東北6県の企業を対象とした最新の「企業短期経済観測調査(短観)」を公表しました。全産業の景況感を示す指標は、前回の2019年9月調査から4ポイント低下して「ゼロ」という結果になっています。これは2013年3月以来、約6年9カ月ぶりの低水準であり、東北経済が大きな転換点を迎えていることを示唆しているでしょう。
「短観」とは、日銀が企業の経営者に現状の景気を尋ねるアンケート調査のことです。景気が「良い」と答えた割合から「悪い」を引いた値を「業況判断DI」と呼びますが、これがゼロになったことは、東北全体で明るい兆しが消えつつあることを物語っています。SNS上でも「地元企業の元気がなくなってきた」「増税後に買い控えが増えた気がする」といった、生活実感に近い不安の声が散見されます。
製造業を直撃する米中貿易摩擦の荒波
特に厳しい状況に置かれているのが製造業です。米中間の貿易摩擦による世界経済の停滞が影を落とし、指標はマイナス9まで悪化しました。なかでも自動車などの輸送用機械はマイナス31という大幅な落ち込みを記録しています。海外向けの部品輸出が減少したことに加え、新型車の投入サイクルが谷間に差し掛かったタイミングも重なり、現場からは悲痛な叫びが聞こえてきそうです。
一方、サービス業などの非製造業も楽観はできません。2019年10月に列島を襲った台風19号は、観光地に甚大なダメージを与えました。宿泊・飲食サービス業の指標は13ポイントも急落しており、旅行のキャンセルや施設被害の大きさがデータにも如実に表れています。ただし、建設業に関しては、災害復旧に向けた公共工事の需要が高まったことで、唯一といっていい明るい材料となっています。
2019年10月の消費増税に伴う「駆け込み需要」の反動も、小売現場を悩ませています。仙台市の百貨店「藤崎」では、11月に入り高額なコートの売れ行きが鈍化しました。しかし、クリスマス商戦の到来とともに、ギフト需要や防寒着などの動きは回復傾向にあります。前回の増税時と比較すると落ち込みは緩やかで、消費者の購買意欲そのものが完全に冷え切ったわけではない点は、唯一の救いかもしれません。
深刻なのは、1991年のバブル期に匹敵すると言われる人手不足の継続です。働き手が足りない状態は、企業にとって採用コストの上昇という重荷になります。今後の見通しも、海外情勢の不透明感や復興需要の一巡によって、慎重な姿勢を崩せない企業が多いようです。今の東北には、変化する外部環境に耐えうるしなやかな経営戦略と、官民一体となった力強い支援が求められているのではないでしょうか。
コメント