2019年11月17日、東京五輪のソフトボール会場としても注目を集める横浜スタジアムにおいて、日本女子ソフトボールリーグの決勝トーナメントが行われました。秋晴れの下、詰めかけた観衆の視線を釘付けにしたのは、やはりこの人、ビックカメラ高崎の絶対的エース・上野由岐子投手です。彼女は1日で2試合を戦い抜き、合計271球という驚異的な球数を投げ込んで、チームを2年ぶりのリーグ優勝へと導きました。
今シーズンの上野投手は、まさに波乱万丈の道のりを歩んできました。2019年4月の試合中に打球が顔面を直撃し、下顎を骨折するという選手生命を脅かす大怪我に見舞われたのです。長期離脱を余儀なくされた彼女が、シーズンの集大成となるこの大舞台でこれほどまでの輝きを放つとは、誰もが予想した以上の劇的な復活劇と言えるでしょう。不屈の精神でマウンドに戻ってきた彼女の姿は、見る者に深い感動を与えました。
北京の激闘を彷彿とさせる「鉄腕」の輝き
この日の第1試合となったトヨタ自動車との3位決定戦では、宿敵とも言えるアメリカ代表の左腕、モニカ・アボット投手との壮絶な投げ合いを演じました。続く決勝のホンダ戦でも勢いは衰えず、見事に完封勝利を収めています。最後の打者を113キロの力強い速球で空振り三振に打ち取った瞬間、スタンドからは割れんばかりの拍手が湧き起こりました。「シーズン最後なので全てを出し切りたかった」と語る彼女の言葉には、エースとしての強い責任感が滲んでいます。
SNS上では「37歳でこのスタミナは異次元すぎる」「これぞ日本の守護神」といった驚きと称賛の声が溢れ返りました。2008年8月の北京五輪で、2日間3試合を投げ抜いた伝説の「413球」を知るファンからは、当時の感動を再現するかのような熱投に、涙を禁じ得ないといったコメントも寄せられています。11年の時を経てもなお、世界の第一線で進化を続ける彼女の技術と体力は、まさに日本スポーツ界の宝と呼ぶにふさわしいものです。
筆者の個人的な見解としても、今回の上野投手のパフォーマンスは単なる「復活」以上の意味を持っていると感じます。負傷という苦難を、技術を研ぎ澄ますための準備期間へと昇華させた彼女のプロ意識には脱帽するしかありません。来年に控える東京五輪に向けて、これほど心強いニュースはないでしょう。若手の台頭も著しいソフトボール界ですが、最後はやはり「背番号15」が試合を締める。そんな期待を抱かせてくれる最高のフィナーレでした。
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