政府は2019年12月5日、国や地方からの財政支出を13兆円規模に積み上げる大型の経済対策を決定しました。今回の施策では通信や医療といった最先端分野の技術開発、そして社会インフラの整備に重点を置いた投資が行われる方針です。
特に注目を集めているのが、複数年にわたり資金を運用できる「基金」や、低金利で産業に資金を供給する「財政投融資(財投)」の積極的な活用でしょう。これらを組み合わせることで対策の総額は膨らみましたが、巨額の税金を投じる以上、その使途を厳格に点検する仕組みがこれまで以上に求められています。
インターネット上では、この大規模な予算編成に対して「将来への投資として期待したい」という前向きな声がある一方で、「借金を増やして大丈夫なのか」といった財政規律の緩みを懸念する意見も目立っています。
世界に挑む「ポスト5G」とムーンショット型研究の正体
今回の対策における目玉の一つは、次世代通信規格「5G」のさらに先を見据えた「ポスト5G」の技術開発支援です。政府は2020年度から数年間、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)へ2200億円もの基金を積み立てることを決めました。
そもそも5Gとは、超高速・低遅延・多数同時接続を可能にする通信技術ですが、日本はこの分野の開発で米中に後れを取っているのが現状です。そこで官民一体となり、最先端の半導体やシステム開発を急ぐことで、世界市場での挽回を狙おうとしています。
また、困難ながらも実現すれば破壊的なインパクトをもたらす「ムーンショット」と呼ばれる野心的な研究事業も拡充されます。こうした長期的な産業政策には、単年度の予算よりも柔軟な基金の仕組みが適しているといえるでしょう。
ワイズスペンディングの実現と財政健全化への課題
一方で、基金は一度設立されると国会での毎年の審議を必要としないため、チェック機能が働きにくいという弱点も抱えています。過去には執行実績が乏しく、多額の資金が国庫に返納された事例もあり、今回も「規模の大きさを優先したのではないか」という指摘が絶えません。
また、今回の支出のうち約3割にあたる3.8兆円は財政投融資が占めています。これは成田空港の滑走路整備などに充てられますが、返済が前提となるため、政府が掲げる基礎的財政収支(プライマリーバランス)の計算には直接影響しません。
基礎的財政収支とは、社会保障や公共事業などの政策的な経費を、借金に頼らずに税収などでどれだけ賄えているかを示す指標です。2025年度の黒字化を目標としていますが、今回の大型対策が見かけ上の数値に影響しないからといって、安易な支出が許されるわけではありません。
私は、今こそ「ワイズスペンディング(賢い支出)」の真価が問われていると感じます。景気の下支えと将来の成長、この両立は容易ではありませんが、データに基づいた透明性の高い検証が不可欠でしょう。日本の公債残高が膨らみ続けるなか、将来世代に負担を先送りしない英断が期待されます。
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