就職活動における面接や自己紹介は、多くの人にとって緊張の瞬間ですが、発達障害を抱える子どもたちにとっては、さらに高いハードルとなる場合があります。そんな中、松山市に本社を置く障害者就労支援の「マルク」が、非常にユニークな解決策を打ち出しました。なんと、仮想現実(VR)技術を活用して、社会性を養うトレーニングを開始したのです。
これは2019年12月07日現在、四国の事業者としては初の試みとなります。具体的には、松山市内で運営されている放課後等デイサービス「マルクスコラ」の全3教室で運用が始まっています。放課後等デイサービスとは、障害のある学齢期の子どもたちが、放課後や休日に生活能力向上のための訓練を受ける、いわば「学校外の学びの場」のことです。
ゲーム感覚で「相手の目を見る」を克服
今回導入されたのは、映像制作会社ジョリーグッドが開発した「エモウ(emou)」という療育プログラムです。体験者はゴーグル型の装置を装着し、1分から4分程度の360度映像を通じて、教室での自己紹介や企業の採用面接といった場面を疑似体験します。数十種類の多彩なプログラムが用意されており、実社会に近い環境で練習を積むことが可能です。
2019年11月に行われた実際の授業では、小学生から高校生までの生徒たちが「自己紹介」に挑戦しました。発達障害の特性として、相手の目を見ることや集中して話を聞くことが苦手な場合がありますが、このシステムには視線の動きを計測する驚きの採点機能が備わっています。適切に相手を見ているかが数値化されるため、子どもたちはゲーム感覚で夢中になって取り組んでいました。
SNSなどでは「VRなら失敗しても怖くないから自信がつきそう」「対面だと緊張しすぎる子には最適のステップ」といった好意的な反響が広がっています。従来のロールプレーでは、顔見知りの講師相手だとどうしても「なれ合い」が生じ、緊張感に欠けるという課題がありました。しかしVRなら、本番さながらの没入感を持ってトレーニングに励めるのです。
福祉と先端技術の融合が拓く未来
マルクの北野順哉社長は、先端技術と福祉を組み合わせることで、他社にはない質の高い支援を提供できると自信をのぞかせています。実際、同社の支援実績は目覚ましく、2016年の開設以来、卒業生のほとんどが一般企業や福祉事業所への就職を果たしました。今後は大人向けの面接プログラムも活用し、さらなる就労支援の強化を目指す方針です。
私自身の考えとしては、こうしたテクノロジーの活用こそが、福祉の現場に「楽しさ」と「客観性」をもたらすと確信しています。努力を可視化できる採点機能は、子どもたちの自己肯定感を高める素晴らしいツールになるでしょう。2023年8月期までに20教室体制を目指すという同社の挑戦は、地域福祉のあり方を大きく変える可能性を秘めています。
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