2019年12月26日現在、アメリカ経済の舵取りを担う米連邦準備理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長が、激動の1年を終えようとしています。12月中旬に開催された今年最後の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見では、これまでの重圧から解き放たれたような安堵の表情が印象的でした。2019年を通じて合計0.75%もの利下げを断行したことで、パウエル議長は「アメリカ経済の先行きは良好だ」と力強い自信を覗かせています。
実はちょうど1年前、FRBは2019年中に2回の利上げを行うと予測していました。中央銀行が金利を上げる「利上げ」は、景気過熱やインフレを抑えるための手段ですが、結果として3回もの「利下げ」に踏み切ったことは、当時の市場関係者にとって予想外の展開でした。この劇的な方向転換の背景には、米中貿易摩擦による景気不安に加え、ホワイトハウスからの類を見ないほど強力なプレッシャーがあったことは否定できない事実でしょう。
SNS上では、ドナルド・トランプ大統領による過激なパウエル批判が連日のように世間を騒がせてきました。「FRBにはガッツもビジョンもない」といった投稿や、パウエル議長を「間抜け」とまで呼び捨てにする姿勢に対し、ネット上では「中央銀行の独立性を脅かす暴挙だ」という批判と、「大統領の言う通り利下げこそが正義だ」という支持派の声が真っ向から対立し、議論が白熱しています。
「予防的利下げ」がもたらした株価最高値と独立性のジレンマ
トランプ氏がここまで強硬な姿勢を見せたのは、2018年末にダウ工業株30種平均がわずか2カ月半で2割も急落した苦い経験があるからです。2020年の大統領選での再選を狙う彼にとって、株価の下落は何としても避けたい事態でした。パウエル議長は、あくまで貿易戦争の影響を最小限に食い止めるための「予防的利下げ」であると説明していますが、結果的に大統領の要求に沿う形となったことで、市場の景気後退リスクは和らぎ、株価は史上最高値を更新しています。
歴史を振り返れば、FRBが政治の圧力に晒されるのは今に始まったことではありません。かつてのボルカー元議長やグリーンスパン氏も、歴代大統領から露骨な利下げ要求を受けたエピソードが残っています。しかし、今回のパウエル議長が置かれた状況が異質なのは、現職大統領から「解任」の可能性まで示唆された点にあります。ホワイトハウス内では法的な解任の可否が検討されたとも報じられており、中央銀行の公平な判断能力が今、かつてない試練に立たされています。
私個人の見解としては、パウエル議長は「経済の安定」と「組織の独立性」という二兎を追う極めて困難な綱渡りに成功したと言えます。政治的な雑音を無視できない環境下で、結果として株価と景気を支えた手腕は評価されるべきでしょう。しかし、トランプ氏が求める「ゼロ金利政策」への圧力は2020年も続くと予想されます。パウエル氏が市場の期待とホワイトハウスの野望、そして経済の実態をどう調和させていくのか、今後も目が離せません。
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