地球に優しいエネルギーとして注目を集める液化天然ガス、通称「LNG」の世界的な大投資ブームが到来しています。2019年に世界で事業化が決定したLNGプロジェクトの規模は、なんと前年の3倍弱となる年間生産能力6000万トン強に達し、過去最高を塗り替える見通しとなりました。これは現在の世界全体の生産能力を一気に15%も上積みする驚異的な数字です。
SNSでは「石炭からガスへのシフトが目に見えて加速している」「世界的な環境対策の本気度が伝わってくる」といった驚きの声が相次いでいます。気候変動への対策が急務となる現代において、燃焼時の二酸化炭素排出量が石炭や石油に比べて少ないクリーンな天然ガスは、脱炭素社会へ移行するための重要な「架け橋」として極めて高い価値を持っています。
エネルギーの主役交代はデータからも一目瞭然でしょう。主要な一次エネルギーの中で、天然ガスが占める割合は2012年から2018年にかけて1.2ポイント上昇し23.9%に達しました。一方で石油や石炭はシェアを落としています。1次エネルギーとは、加工される前の自然界から得られるエネルギーのことで、石炭の凋落とガスの躍進は世界的な潮流です。
この投資熱を牽引しているのが、独自の採掘技術によって天然ガスが大量生産可能となった「シェール革命」に沸く北米地域です。2019年に決定した投資案件の半分がこの北米に集中しています。カタール国営石油と米エクソンモービルが、メキシコ湾で100億ドルを超える巨額投資を決断した事例をはじめ、世界のマネーが北米のガス開発へとなだれ込んでいます。
さらに投資の波は北米に留まらず、アフリカや極東ロシアへと地球規模で広がっています。東アフリカのモザンビークでは仏トタルや日本の三井物産などが参画する200億ドル規模の計画が始動しました。また、厳しい環境のロシア北極圏でも約210億ドルの巨大プロジェクトの最終投資が決定し、エネルギー地政学の地図が塗り替わりつつあります。
迫り来る2020年代半ばの供給不足と日本企業の巨大な商機
足元の市場は、過去に投資されたプラントが相次いで稼働したことで、買い手が有利に契約を結べる「買い手市場」となっています。しかし、この平穏も長くは続かない見込みです。環境対策を進める中国やインドなどの新興国が爆発的に輸入を増やしているため、2022年から2023年頃には早くも需給が逼迫し始めると予測されているからです。
このままでは2030年に年間1億7500万トンものLNGが不足するという試算もあり、2019年に決まった投資量でもまだ足りない恐れがあります。そのため、2020年もカタールや米国でさらなる投資決定が予測されており、世界の年間投資規模は9000万トンに迫る勢いです。絶え間ない需要の拡大が、エネルギー投資を突き動かしています。
この巨大な市場のうねりは、日本企業にとっても千載一遇のチャンスとなるはずです。商社大手の三菱商事や三井物産は、2020年代に自社が取り扱うLNGの量をそれぞれ現状の2倍から3倍に近い年間約1400万トンへと急拡大させる方針を掲げています。これは世界トップクラスのエネルギーメジャーである英BPの背中に迫る規模となります。
世界をリードする石油メジャーの「ガスシフト」も鮮烈です。業界トップの英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルはカナダ西部で約140億ドルの計画を推進しており、仏トタルも北米やアフリカの権益を貪欲に買収しています。トップ集団が覇権争いを繰り広げる中、日本の商社勢がどこまでその存在感を高められるか、日本の経済界からも熱い視線が注がれています。
中東情勢の緊張リスクが突きつけるエネルギー安全保障の課題
一方で、バラ色の未来ばかりではありません。足元で緊迫化する米国とイランの対立など、中東の地政学リスクが影を落としています。世界最大級のLNG生産国であるカタールやアラブ首長国連邦はペルシャ湾に位置し、世界全体の4分の1の輸出量を占めています。ホルムズ海峡の通過に懸念が生じれば、世界のエネルギー供給は大打撃を受けかねません。
SNS上でも「中東依存のリスクが改めて浮き彫りになった」「日本は調達先を早急に分散すべきだ」という危機感を持った意見が多く見られます。ただ、この危機は裏を返せば、中東以外の地域におけるLNG開発の追い風にもなり得ます。原油価格に連動する長期契約が多いLNGにとって、中東緊迫による原油高は他地域での投資を後押しするからです。
かつて原油価格の低迷でカナダやオーストラリアで「塩漬け」されていたプロジェクトが、原油価格の持ち直しによって再び動き出しているのは好ましい兆候です。私個人の見解としては、エネルギーを海外に依存する日本だからこそ、特定の地域に依存しない「調達先の多角化」を国を挙げて推し進めるべきだと強く主張いたします。
中東リスクは脅威ですが、北米やロシア、アフリカでの開発は、日本の安全保障を強化する絶好の機会です。環境への配慮と安定供給の両立という難しいパズルを解く鍵は、まさにこのLNGの世界的投資ブームの中にあります。日本企業がこの激動のエネルギー大転換期を勝ち抜き、世界の主導権を握ることを期待してやみません。
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