世界規模で圧倒的な影響力を誇る巨大IT企業たちの勢いが止まりません。マサチューセッツ工科大学のデービッド・オーター教授は、こうした市場を席巻する組織を「スーパースター企業」と名付け、その出現が私たちの暮らしに暗い影を落としていると警告しています。ネット上でも「どれだけ働いても給料が上がらない理由が分かった」と、この現状に納得と不安の声が渦巻いている状況です。
オーター教授が指摘する最も深刻な問題は、企業が得た利益のうち労働者に分配される割合を示す「労働分配率」が、世界的に低下している点にあります。イノベーション、つまり技術革新や画期的なアイデアによって勝利を収めた一握りの会社が、市場の富を独占する仕組みが完成しているのです。ネット通販のアマゾンや、スマートフォンの基本ソフトを押さえるグーグルやアップルがその象徴と言えるでしょう。
優れたシステムを構築した巨大企業は、最小限の人員と低コストで大量のサービスを提供できるため、多くの人を高賃金で雇う必要性が薄れてしまいます。その一方で、莫大な富は株主や経営者へと集中していく仕組みです。先進国では失業率自体は下がっているものの、実際に増えているのは高齢者介護や警備といった、特別な資格や高度な技術を必要としない非熟練労働のポジションばかりとなっています。
こうした職種は長年勤めても専門性を高めにくく、生涯を通じて劇的な給与アップを期待するのは難しいのが現実です。常に若い世代との雇用競争にさらされるため、身分の安定性も脅かされます。仕事そのものが消失することよりも、このように賃金が上がりにくい低スキル職の割合が増加していくことこそが、現代社会が直面している本当の恐怖ではないでしょうか。
独占の弊害と求められる政府の介入
本来であれば、人手不足の局面では企業は給与を上げてでも人材を確保するため、労働分配率は上がるはずです。しかし、失業率が大きく下がったこの10年間を振り返っても、分配率の低下傾向に歯止めはかかっていません。2020年01月20日現在、明確な反転の兆しは見られず、テクノロジーの進歩が必ずしも社会全体の生産性向上や、働く人々の幸福に直結していない事実に私たちは気づくべきです。
強すぎる支配力を持った組織は、そのパワーを乱用するリスクをはらんでいます。アメリカの医療機関統合による費用高騰が良い例であり、巨大企業が政治へのロビー活動、いわゆる政策提言や働きかけを通じて新興企業の参入を阻む恐れもあります。市場の健全な競争を守り、富を再び労働者へ還流させるために、政府は実効性のある対策を早急に打ち出す義務があると考えます。
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