2019年の台風10号がもたらしたフェーン現象は、多くの農家に深刻な打撃を与えました。特に県産コシヒカリの品質を示す「1等米比率」が20%台にまで落ち込むという大ピンチを迎えたのです。そんな過酷な状況下でも、独自の工夫で56%という高い比率を維持した先進的な取り組みが大きな注目を集めています。
この驚異的な成果の秘密は、田植えの時期を意図的に1〜2週間ほど遅らせた点にあります。作業の効率化を狙って作付けのタイミングをずらした結果、夏の猛暑が出穂期に重なるのを避けることができました。SNS上でも「気候変動に対応する柔軟な発想が素晴らしい」「これからの農業には戦略が必要だ」と、称賛の声が相次いでいます。
さらに、晩生(おくて)品種である「あきだわら」の作付け時期を見直したところ、2019年産は見事に100%の1等米比率を達成しました。「晩生」とは、通常よりも収穫期が遅い品種のことです。この品種は、稲の穂が実る「登熟(とうじゅく)」というプロセスに時間がかかるため、適切な時期に植えることが品質を左右する鍵となります。
データを駆使するスマート農業と「直まき」の可能性
次なる品質向上への切り札として期待されているのが、ICT(情報通信技術)を活用した「スマート農業」です。2017年には、収穫しながら田んぼごとの収量や味をデータ化できる最新コンバインを導入しました。この蓄積されたデータをもとに、田植機が自動で最適な量の肥料をまくシステムを構築し、人手不足を補っています。
また、2020年からは育苗の手間を省く「直まき」の栽培方法を本格的に取り入れる方針です。これは種もみを乾いた田んぼに直接まく技術で、2019年の試験では通常より最大3割も収量が増加しました。コストを劇的に抑えられるため、専用農機の購入も視野に入れ、メーカーとの連携を強めています。
しかし、こうした最先端技術の導入には高額な初期投資という壁が立ちはだかります。そこで浮上したのが、農機や資材を共同購入する「農家版ホールディングス」という画期的な構想です。複数の経営者が緩やかにつながり、お互いの立場を尊重しながら農地の大規模化と効率化を目指す仕組みとして、行政からも熱い視線が注がれています。
人口減少に伴いコメの需要が年10万トンペースで減る中、農家には市場を見極める力が求められます。高齢化が進む農業界において、高価なICT技術の導入ハードルを下げるサポートは急務でしょう。単なる規模拡大ではなく、地域のつながりを活かしたこの連帯の形こそが、日本の主食を守る持続可能な答えになると私は確信しています。
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