日本特殊陶業の挑戦!川合尊社長が描く「次の100年」を創る医療・次世代車・環境のビジネス新戦略

世界トップシェアを誇る自動車のスパークプラグメーカーとして有名な日本特殊陶業が、大きな転換期を迎えています。2019年に行われた社長就任から1年あまりが経過した川合尊氏は、既存のビジネスにとらわれない新しい事業の育成に全力で取り組んでいるのです。

技術者として「全領域空燃比センサー」の開発を率いてきた川合社長は、同社の中でも異色のキャリアを持っています。1987年の入社時に配属されたのは、当時社内ベンチャーのような存在だったセンサ研究部でした。それ以来、自動車の排気口に取り付けるセンサー事業に情熱を注ぎ続けてきたのです。

全領域空燃比センサーとは、自動車の燃費を最適化するために排気ガス中の酸素濃度を極めて正確に測定する装置のことです。ガソリンが効率よく燃えるように酸素の量を調整する役割を担うこの装置は、1990年代初頭に自動車メーカーへ採用されました。しかし、そこからが苦難の始まりだったのです。

急激な温度変化や水がかかる過酷な環境下で不具合が発覚し、川合氏らは自動車メーカーの技術者と2000年ごろまで試験と改良を繰り返しました。この泥臭い現場での二人三脚が信頼関係を生み、かつてはお荷物だった事業を、2019年3月期には売上高1425億円を稼ぐ主力へと成長させたのです。

SNSでは「危機感を持って次の柱を探す姿勢が素晴らしい」「技術出身の社長だからこそ現場の強みが活きる」といった好意的な反響が多く寄せられています。自動車業界が100年に1度の大変革期を迎える中で、既存の成功に甘んじない経営姿勢が多くの人々の共感を呼んでいるのでしょう。

私は、川合社長の「在任中に数百億円規模の事業の芽を複数育てる」という強い決意に深く感銘を受けました。将来的に電気自動車が普及すれば、エンジン向けの部品需要が減ることは確実です。だからこそ、今ある利益を未来への投資へ回す決断力は、企業の存続において不可欠だと確信します。

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医療・次世代車・環境に注目!枠に捉われない成長戦略

未来を見据える日本特殊陶業が特に注力しているのが、医療、次世代自動車、環境・エネルギーの3領域です。2018年にはアメリカの医療機器メーカーを買収し、慢性閉塞性肺疾患の患者が使う酸素濃縮装置と、自社の得意なセンサー技術を融合させた新商品の開発を進めています。

さらに、2020年度の事業化を目指すのが「固体酸化物形燃料電池(SOFC)」です。これはセラミックスを電解質に用いて高温で効率よく発電する次世代のクリーンな燃料電池のことです。2019年12月には他社と共同出資した新会社を始動させ、工場などの補助電源としての普及を狙います。

同社は2019年5月にフランスのパリへ新規事業開発の拠点「ベンチャーラボ」を開設しました。東京やアメリカのシリコンバレーにも拠点を構え、すでに20社以上のスタートアップ企業へ出資しています。自前主義を捨てて外部の革新的な技術を取り入れる柔軟さには目を見張るものがあります。

面白い事例として、岐阜県でのエビの陸上養殖の実証実験が挙げられます。水質悪化や酸欠が起きやすい養殖プールに同社の高性能センサーを導入し、アンモニア濃度などを正確に測定して生育を支援する仕組みです。2020年秋の量産化に向けて、IoT技術を活用した管理システムも開発されました。

短期的には、世界的な環境規制の強化に伴って高性能なプラグやセンサーの需要は世界中で伸びる見込みです。川合社長は東南アジアの需要を取り込むため、タイの新工場へ120億円を投じて2020年3月からの生産開始に向けて準備を急いでおり、足元の守りも一切怠っていません。

川合社長の趣味は競馬観戦であり、情報を徹底的に集めてリスクと勝率を天秤にかけるプロセスが経営に通じると語ります。激変する市場の荒波を乗りこなすために、攻めと守りの絶妙なバランスを取りながら進む同社の挑戦から、今後も目が離せないでしょう。

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