東南アジアにおける自動車製造の一大拠点であり、「アジアのデトロイト」とも称されるタイの自動車市場が、今まさに大きな岐路に立たされています。世界的な自動車大手であるトヨタ自動車のタイ法人が2020年1月23日に発表した最新の見通しによると、同年のタイ国内における新車販売台数は前年比で7%減少の94万台にとどまる見込みです。もしこの予測が現実となれば2年連続の前年割れとなり、市場の活況を示す一つの目安である「100万台」の大台を3年ぶりに割り込む深刻な事態といえます。
自動車産業は裾野が非常に広く、部品メーカーから物流まで数多くの関連産業に支えられているため、この市場低迷が長引けば経済全体へ与えるダメージは計り知れません。ネット上のSNSでも「タイの景気後退は日本企業への影響も大きそう」「ローンが組みにくくなっているのはリアルな問題」といった、先行きを不安視する声が数多く上がっています。なぜこれほどまでに、タイの新車市場は冷え込んでしまっているのでしょうか。その背景には、一国だけでは解決できない複雑な世界情勢が絡み合っています。
新車市場を襲う逆風の正体と日系ブランドの底力
販売失速の主な要因として挙げられるのが、長期化する米中貿易戦争がもたらした世界的な景気減速と、タイ国内における自動車ローンの審査引き締めです。景気の不透明感から買い控えが起きているだけでなく、過度な家計債務を警戒した金融機関がローンの貸し出し基準を厳しくしたことで、消費者が車を買いたくても買えない状況が生まれています。実際、2019年12月末時点の年間販売実績を振り返っても、前年比3%減の100万7552台と3年ぶりのマイナスを記録していました。
トヨタ自動車タイ法人の菅田道信社長は記者会見の席で、2020年も消費者心理の冷え込みや不安定な世界経済が強い逆風になると警戒感をあらわにしています。ただ、このような苦境の中でも、日本メーカーが誇るブランド力と信頼性の高さは現地で圧倒的な存在感を放ち続けました。2019年のタイ市場においてトヨタは33%という堂々のシェアを獲得して首位を死守しており、日系メーカー全体を合わせるとなんと87%という驚異的な占有率を維持しているのです。
私個人の視点として、今回の市場縮小は単なる一時的な不況ではなく、タイの自動車産業が次なるステージへ進むための試練であると捉えています。シェアの大部分を握る日系各社は、この足踏み期間をチャンスに変え、現地のニーズに即した低燃費車や次世代モビリティの提案など、新たな付加価値を模索すべきでしょう。厳しい状況だからこそ、タイのユーザーに寄り添った柔軟な戦略を展開し、市場の回復期に向けて強固な土台を再構築していくことに期待したくなります。
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