米国株式市場が力強く上昇を続ける中、海の向こうの欧州市場でも株価の快進撃が続いています。2020年1月17日には、ヨーロッパの主要企業で構成される株価指数「ストックス600」が過去最高値を塗り替えました。これまで世界経済の大きな足かせとなっていた米中貿易摩擦が「第1段階」の正式合意に至ったことで、先行きへの霧が晴れ、投資家の買い安心感が広がった格好でしょう。
市場で特に熱い視線を浴びているのは、半導体やインターネット関連といった最先端のハイテク産業です。その一方で、自動車などの伝統的な大型製造業は上値の重い展開が続いており、最高値圏だからこそ、投資家が将来性のある企業を冷静に見極めている様子が伝わってきます。この動きに対しSNS上では「いよいよ欧州株の時代が来たか」「新興ネット企業の勢いが凄まじい」といった期待の声が目立っています。
米国株を凌ぐ「値ごろ感」が追い風に
2020年1月20日の欧州市場では、ドイツの主要株価指数であるDAXが続伸し、2018年1月に記録した過去最高値まであとわずか0.1%という水準に迫りました。今、ヨーロッパ市場に世界中の資金が引き寄せられている最大の理由は、米国株と比較した圧倒的な「値ごろ感」にあると考えられます。
現在の株価が割安か割高かを測る指標である予想PER(株価収益率)を見ると、米国のS&P500が19倍弱まで買われているのに対し、ストックス600は最高値圏でありながら15倍台半ばにとどまっているのです。さらに、投資額に対する配当の割合を示す平均配当利回りも、米国株の1%台後半に対して欧州株は3%強と、インカムゲインの魅力でも大きくリードしています。
英金融大手のバークレイズも、2020年は割高感のある米国株から欧州や新興国へ資金がシフトするとの予測を立てています。米中対立の緩和によって投資家がリスクを取りやすくなった今、割安で高利回りな欧州株に資金が流入するのは極めて自然な流れであり、このトレンドは当面続くと私は確信しています。
次世代を担うネットベンチャーと半導体企業の躍進
では、具体的にどのような企業が市場を引っ張っているのでしょうか。ストックス600の2019年の値動きを振り返ると、主役に躍り出たのは重厚長大の伝統企業ではなく、次世代のITサービスやハイテク企業でした。特筆すべきは、2011年創業で2017年に上場したばかりのフードデリバリーベンチャーの台頭です。
食材とレシピが届くミールキット配送で急成長したドイツのハローフレッシュは、家事の手間を省く現代のライフスタイルにマッチし、株価が3倍に大化けしました。世界各国で料理宅配を展開するデリバリーヒーローも株価を2.2倍に伸ばしています。これら新興企業の躍進は、人々の生活様式の変化を捉えた当然の結果と言えるでしょう。
また、次世代通信規格「5G」の普及を見据えた半導体関連への物色も非常に活発です。オランダの半導体製造装置メーカーであるASMインターナショナルは株価が2.8倍に跳ね上がり、足元でもさらなる高値を模索しています。大手半導体企業の強気な業績見通しも刺激となり、市場では「明確な上昇サイクルに入った」との見方が強まっています。
伝統産業の苦悩と進む市場の新陳代謝
その一方で、米中摩擦の緩和という吉報があっても活気に乏しいのが、自動車や銀行といったオールドエコノミーです。ドイツを代表するダイムラーやBMWは株価の戻りが鈍く、大手自動車部品メーカーのコンチネンタルは下落基調から抜け出せていません。これは、巨額の投資と激しい競争が避けられない電気自動車(EV)シフトへの警戒感が背景にあります。
米国のテスラ株が急上昇しているのとは対照的であり、欧州の伝統的な自動車メーカーが新時代への変革に苦慮している姿が浮き彫りになっています。また、銀行業界も長引く低金利環境や、スマートフォンアプリを駆使するフィンテック企業の台頭によって将来への不安が拭えません。
最高値を更新する欧州市場の裏側では、古い産業から新しい産業への「新陳代謝」が猛烈なスピードで進んでいます。投資家としては、単に市場全体を買うのではなく、この構造変化を見極めて未来の勝者に投資することこそが、今後の資産運用において極めて重要な鍵となるでしょう。
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