2020年2月5日現在、私たちの日常生活はデジタル技術なしでは成り立たなくなりました。スマートフォンを操作し、検索エンジンを使うたび、個人の行動データはプラットフォーマーと呼ばれる巨大IT企業に蓄積されています。私たちが意識しないうちに収集されたデータは、高度な人工知能(AI)や複雑なアルゴリズムによって分析され、巨大な収益を生む市場価値へと変換されているのです。
本来であれば自分自身の持ち物であるはずのデータが、なぜか一部の経営者の高額報酬や株主への配当に姿を変えています。この仕組みをこのまま放置すれば、一般の生活者と企業の間の経済格差は広がる一方でしょう。SNS上でも「便利さと引き換えに搾取されているのではないか」といった懸念の声が日に日に高まっており、もはや無視できない社会問題となっています。
現状では、個人情報の保護を強化したり、優越的地位の乱用を規制したりする動きが急ピッチで進められています。しかし、それだけの対処療法で格差の拡大を止めることは困難です。私個人としては、まずは企業側に「データは社会の公有財である」という認識を強く持っていただく、新しい社会規範やモラルの再構築が不可欠だと考えています。
グローバル化の中で問われる日本の平等精神
かつての日本には、経済的な成功を収めた人が極端な高額報酬を受け取ることを控えるという、一種のブレーキのような社会規範が存在しました。経済協力開発機構(OECD)の統計でも、日本の税や社会保障による再分配前の所得は、世界的に見ても驚くほど平等です。かつて日産自動車の元会長が給与の過少記載問題を起こした背景にも、こうした日本特有の抑制的な社会規範が影響していたのでしょう。
ところが、経済のグローバル化とともに、こうした日本の美徳は急速に崩れつつあります。今こそ国家がその権能をフルに発揮し、税制や社会保障制度を抜本的に見直すべきではないでしょうか。特に、金融所得を含めた所得税の累進税率を強化し、実効性の高い富の再分配を実現することが求められています。現に、現在の日本の制度は再分配後の平等度が先進国の中でも低いという現実があるからです。
現在のアベノミクスは、経済が成長すれば自然と富が下層へ浸透するという「トリクルダウン」の考え方に固執しているように見えます。しかし、デジタル経済において付加価値は一握りの層に集中するため、自動的な富の還元は期待できません。AIによる労働の代替も進む今、手をこまねいていれば中間層は崩壊し、社会の分断が深刻化してポピュリズムを招きかねません。
デジタル経済という新たな荒波の中で、いかにして公正な社会を維持していくのか。所得の再分配という国家本来の役割を全うし、格差是正に本格的に取り組むことこそ、安倍長期政権が後世に残すべき「レガシー(遺産)」となるはずです。
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