【2020年最新】5兆円市場へ挑む!日本の遺伝子治療が「眠れる資産」で欧米を猛追する理由

病気の根本原因に直接アプローチできる「遺伝子治療」の開発が、いま世界中で猛烈なスピードで進んでいます。長きにわたり欧米の後塵を拝してきた日本ですが、2019年に入り事態は急転しました。2つの革新的な治療薬が国内で承認され、ついに日本も本格的な普及期を迎えたのです。ネット上でも「ついに日本でも最先端治療が受けられる時代が来た」「難病に苦しむ人の光になってほしい」と、期待に満ちた声が次々と上がっています。

市場規模は右肩上がりで、2030年には5兆円に達すると予測される超巨大産業です。これまではスイスのノバルティスや米ファイザーといった海外メガ製薬企業が市場を牽引してきました。その代表例が2017年に米国で登場した「キムリア」です。これは患者の免疫細胞を改変してがんへの攻撃力を高める治療法で、白血病患者の約8割でがん細胞が消失するという驚異的な成果を叩き出し、世界に衝撃を与えました。

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なぜ日本は遅れをとったのか?再生医療の影で守られた「基礎研究」

実は、日本の遺伝子治療における基礎研究の歴史は30年近くに及び、欧米と比べても決して引けを取りません。最初の臨床治療は1995年に行われており、独自の技術は脈々と蓄積されていました。しかし、2012年に欧米で初の薬が承認された一方、日本は2019年まで遅れることになります。この格差の背景には、国の政策方針がありました。

日本は、京都大学の山中伸弥教授が開発した「iPS細胞」に代表される再生医療の分野へ、科学研究費を集中投資してきた経緯があります。その結果、多くの優秀な研究者が再生医療へとシフトし、ウイルスを用いた遺伝子治療は一時「古い技術」と軽視される風潮さえありました。画期的な発見に資金が偏る日本の研究環境の偏重ぶりには、産業界からも危機感を募らせる声が少なくありませんでした。

しかし、風向きは確実に変わっています。2014年に「再生医療等安全性確保法」が施行されたことで、細胞の培養や臨床試験の手続きがスムーズになり、開発環境が劇的に改善されました。遺伝子を患部へ送り届ける「ベクター」と呼ばれるウイルスの乗り物(運び屋)の研究も、水面下で着実に実を結んでいたのです。長年耐え忍んだ日本の基礎研究が、今まさに覚醒の時を迎えています。

産学官の連携が加速!国内製薬大手が仕掛ける大逆転劇

2019年の国内承認を契機に、日本の現場はかつてない熱気に包まれています。武田薬品工業はアイルランドのシャイアー社を買収し、血友病の治療技術を獲得しました。さらに山口大学発のスタートアップと組み、これまで血液がんにしか効かなかった治療法を、肺がんなどの「固形がん(塊を形成するがん)」にも応用できる革新技術の商業化へ乗り出しています。

第一三共も東京大学とタッグを組み、脳腫瘍向けの遺伝子改変ウイルスの承認申請に向けた準備を急ピッチで進めています。これまでの新規医薬品開発では海外の技術に頼りがちだった日本企業が、ここにきて国内大学の「眠れる資産」である研究シーズ(新薬の種)の活用へ舵を切ったことは、非常に理にかなった素晴らしい戦略だと言えます。

なかでも業界を震撼させたのが、アステラス製薬の決断です。2019年12月、堅実経営で知られる同社が、米国のスタートアップ企業であるオーデンテス・セラピューティクス社を約30億ドル(約3200億円)で買収すると発表したのです。目的は、遺伝子治療の鍵を握る「ベクター」の量産化技術の獲得にあります。

アステラス製薬は同時に、鳥取大学や東北大学発の企業、さらには自治医科大学発の遺伝子治療研究所とも連携し、網膜疾患やALS(筋萎縮性側索硬化症)といった難病治療の開発を同時並行で進めています。「日本全国に眠る独自の有力技術を使い倒す」という同社の強い覚悟と、それを後押しする政府の助成金支援により、産学官の歯車は力強く回り始めました。

SNSでは「日本の製薬会社が本気を出してきた」「大学の優れた研究がようやくビジネスと結びつく」と好意的な意見が目立ちます。2019年を「遺伝子治療元年」とした日本。欧米に追いつき、世界市場で主導権を握るための本番の闘いは、まさにここから始まるのです。

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