日本経済がいま、かつてない未知の領域へと足を踏み入れようとしています。2020年2月13日現在、世界中を揺るがしている新型肺炎の影響によって景気悪化の影が忍び寄る中、これまでの常識を覆す異例の事態が予測されているのです。それは、景気が冷え込んでいるにもかかわらず、働く人が決定的に足りなくなる「景気後退下の人手不足」というパラドックスにほかなりません。通常であれば景気が悪くなると企業の求人は減り、職を求める人が溢れるため、労働力不足は自然と解消へ向かうのが一般的な経済の経験則でした。
しかし、現代の日本が直面している状況には、その大原則がまったく通用しないようです。SNS上でもこの奇妙な現象は大きな注目を集めており、「不景気なのに仕事がきついなんて信じられない」「人手が足りないなら給料を上げてほしいけれど、会社にそんな余裕はなさそう」といった、現場で働く人々のリアルな不安の声が続々と寄せられています。なぜ、このような歪んだ構造が生まれてしまったのでしょうか。その背景には、景気の良し悪しとはまったく別の次元で進行している、日本特有の深刻な構造的問題が潜んでいるのです。
その最大の原因は、2012年頃から本格化した「団塊の世代」の一斉退職にあります。日本の戦後ベビーブーム期である1947年から1949年に生まれた世代が次々と現役を引退し、さらに少子化による新卒者の減少が重なったことで、労働市場の土台そのものが大きく縮んでしまいました。これまでは幸いにも緩やかな好景気が続いていたため、この問題は何とか表面化せずに済んでいたのです。しかし、今後は景気後退という荒波が押し寄せることで、企業はいよいよ体力の限界を迎え、より過酷な局面へと突入していくでしょう。
迫りくる人手不足倒産の恐怖と、4月に控える新たな試練
景気が冷え込むと、企業は将来への投資や採用活動に資金を回す余裕が失われてしまいます。その結果、新たな求人を諦めざるを得なくなったり、業務を自動化して人手を減らすための省人化投資(ITツールやロボットを導入して効率化を図ること)を見送ったりする企業が急増するはずです。業績の悪化に加えて現場の労働力まで枯渇すれば、真っ先に懸念されるのが「人手不足倒産」の連鎖でしょう。これまでは事業の継続に迷っていた中小企業の経営者が、ついに力尽きて廃業を決断する悲しいケースが増える可能性は極めて高いと言えます。
さらに追い打ちをかけるように、2020年4月1日からは中小企業を対象とした「時間外労働の上限規制」がスタートします。これは働き方改革の一環として法律で残業時間の上限を厳しく定めるものですが、大企業に比べて資金力も人材も乏しい中小企業にとっては、非常に重い足枷になりかねません。人手が足りない中で労働時間まで制限されれば、業務が回らなくなるのは明白です。ただでさえ収益環境が厳しい地方の企業や小規模事業者は、この新たな規制によってさらに倒産や廃業の危機へと追い詰められていくでしょう。
編集部としては、この未曾有の事態に対して国や自治体がより柔軟で実効性のある中小企業支援策を打ち出すべきだと考えます。机の上の理論で作られた規制を無理に当てはめるだけでは、日本の経済を支える足腰が完全に崩壊しかねません。新型肺炎による実体経済への悪影響が現実味を帯びる中、まずは4月の規制開始のタイミングを境に、企業の倒産ラッシュが起きないよう厳重に警戒していく必要があります。私たちは今、日本経済のあり方を根本から見直さなければならない、重大な転換点に立っているのです。
コメント