2019年07月02日現在、日本企業の間では「コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)」を設立する動きが一段と加速しています。CVCとは、事業会社が自社の本業との相乗効果を狙ってベンチャー企業に投資する仕組みのことです。しかし、単に資金を投じるだけでは成功は望めません。シリコンバレーという特別なコミュニティで価値ある情報を得るためには、親会社の都合を押し付けるのではなく、現地のネットワークに一人の投資家として認められることが不可欠なのです。
こうした厳しい環境下で、日本人によるベンチャーキャピタル(VC)として確固たる地位を築いているのが「トランスリンク・キャピタル」です。大谷俊哉氏が2006年に多国籍なパートナーと共に立ち上げたこのファンドは、当初の5000万ドルから、最新の4号ファンドまでで累計投資額6億ドルを超える規模へと成長を遂げました。大谷氏は商社の駐在員から現地のベンチャー、そしてCVCを経て独立するという稀有な経歴を持ち、その実績が厚い信頼へと繋がっています。
同様に目覚ましい躍進を見せているのが、かつてのドレイパー・ネクサスから社名を改めた「DNXベンチャーズ」です。2011年の設立当初は5000万ドル規模でしたが、2016年の2号ファンドで成功を収め、現在は3億ドルに迫る3号ファンドを運用するまでに至りました。創業者の北村充崇氏もまた、公的機関や投資会社での経験を経て、シリコンバレーという大海原で自らの道を切り拓いてきた人物として、現地の投資家たちから一目置かれています。
北村氏は、当初無名だった組織にいながら、個人の力だけで有望な投資案件を掘り起こすという困難な下積み時代を経験されました。その過程で、伝説的な投資家であるティム・ドレイパー氏との知己を得たことは、まさに個人の情熱が運命を変えた好例と言えるでしょう。SNS上でも「結局は看板ではなく、誰が投資しているかが重要」という声が多く聞かれますが、シリコンバレーの成功者に共通しているのは、何としてもやり遂げるという不屈の意志と持続力に他なりません。
組織の論理を超越する「個の力」が未来を創る
私がこれら先駆者の姿から感じるのは、日本企業の多くが抱える「組織の論理」への危惧です。大企業の一般的な人事異動の一環としてCVCの担当者を配置するようでは、現地コミュニティでの存在感を示すことは極めて難しいでしょう。逆説的かもしれませんが、今すぐにでも独立して自分のVCを立ち上げられるほどの、強烈な「人間力」を備えた人物をリーダーに据えることこそが、CVCを成功に導くための唯一の近道であると私は確信しています。
幸いなことに、2019年07月02日現在の日本企業の中にも、圧倒的な熱量で組織を牽引するCVC担当者が現れ始めています。彼らは単なる会社員としてではなく、能動的に経営トップを説得し、自らのビジョンを実現しようとする気概に満ち溢れています。こうした既存の人事評価では測りきれない才能を活かせるかどうかは、経営者の度量にかかっています。トップ自らが彼らの挑戦を支え、守り抜く姿勢を示すことで、初めて本物のイノベーションが生まれるのです。
ベンチャー投資の本質は、結局のところ人と人との信頼関係、つまり「人間力のネットワーク」に集約されます。投資のプロフェッショナルたちが築いてきた道筋をたどり、日本発のCVCやVCが世界を驚かせる成功例を次々と輩出することを期待してやみません。これからの時代、企業の規模以上に、そこで働く「個人」がどれだけの熱量を持ち、どれだけの人を惹きつけるかが、ビジネスの成否を分ける決定的な要因となっていくことでしょう。
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