【JFEスチール社長が語る】AIとデータ活用が鍵!巨大な中国勢に「日本の鉄鋼」が勝ち続けるための戦略とは?

2019年6月5日、米中貿易摩擦の再燃や中国経済の不透明感が世界を覆う中、日本の鉄鋼業界は巨大なライバルとの競争にさらされています。中国は過去20年で粗鋼(そこう)生産量を約7倍にまで急増させ、今や世界の約5割のシェアを占めています。その圧倒的な規模を前に、日本の鉄鋼メーカーはいかにして優位性を保ち、勝ち残っていくのでしょうか。JFEスチールの北野嘉久社長に、中国勢との競争戦略についてお話を伺いました。

中国の鉄鋼業がここまで巨大化した背景には、旺盛なインフラ整備による鉄鋼需要に加え、政府主導での生産量コントロールが大きく関わっていると、北野社長は指摘されました。需要を上回る規模での生産能力増強の結果、2014年以降、中国からの安価な鋼材輸出が世界的に急増し、世界的な鉄余りという状況を招きました。これに対し、国際社会では2016年から中国の過剰生産を抑制する取り組みが進められていますが、いまだに中国勢の積極的な投資意欲は衰えていない状況です。

北野社長が現在最も懸念されているのは、貿易戦争による中国経済の冷え込みが、鉄鋼需要に影響を及ぼすことです。中国からの安値鋼材の輸出が再び増加し、市場の価格(市況)が悪化すれば、それは日本の鉄鋼業界にとっても大きなリスクとなるでしょう。この懸念は、当時のSNSでも「中国の安値攻勢はいつまで続くのか」「国内メーカーの体力勝負になりそうだ」といった、不安の声として反響が寄せられていました。

では、その技術力についてはどうでしょうか。北野社長によりますと、中国勢が強みを持つのは、主に建築などに用いられる汎用(はんよう)の鋼材、つまり一般的な用途に使われる製品に限られています。一方、自動車に使われるような高い機能や品質が求められる鋼材(高付加価値品)を、自力で生産するノウハウは、まだ持っていない段階です。現在は、日本や欧州のメーカーが中国メーカーと合弁で加工拠点を設立し、生産を支えているのが実情です。このような協業が可能な鉄鋼メーカーも、中国では一部の大手に限られているということです。

しかし、将来的に中国勢に追い抜かれる可能性は否定できません。鉄鋼製品の製造は、装置(設備)さえ揃えれば同じレベルの製品が作れるほど単純なものではなく、特に自動車用の鋼板などは、加工ノウハウの塊と言える高度な技術が必要です。だからこそ日本企業は競争力を保てていますが、中国勢が汎用品から高付加価値品へとレベルを上げるのは確実な流れと見られています。日本のメーカーは常に技術革新を続けなければ、いつか追い抜かれてしまう危機感を抱いているのです。

では、日本のリードを保ち続けるためのカギは何でしょうか。北野社長は、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)の活用を挙げられています。日本の製鉄所は、長年の操業で培われた、高付加価値な鋼材を加工する熟練した職人(マイスター)のノウハウや、トラブル発生時の記録といった、貴重なデータを大量に蓄積してきました。これらの質の高いデータは短期間では決して作れないものであり、最新のAI技術と組み合わせることで、大きな競争力につながると北野社長は強く確信されている様子です。JFEスチールも、データの活用を担う人材を今後2年間で約3倍に増やす計画を進めているということです。

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過剰生産の影と日本の鉄鋼が取るべき針路

中国は2016年以降、質の悪い製品を製造する鉄鋼メーカーを政府主導で淘汰し、国内企業再編を進めることで、過剰生産の抑制に取り組んできた歴史があります。中国政府は過剰生産の問題はすでに解決済みという姿勢を崩していません。しかしながら、ここに来て中国の鉄鋼メーカーが、東南アジアなどの周辺国で製鉄所への投資を増やし始めている現状があります。この動きは、収束したかに見えた過剰生産の問題が、周辺国を巻き込みながら再び広がる可能性を否定できないことを示唆しています。

巨大な中国発の市況悪化リスクに備えるためにも、日本の鉄鋼メーカーは収益基盤をしっかりと強化しておく必要があります。2018年は、日本の粗鋼生産量が主要国で唯一のマイナス成長となりましたが、これは設備トラブルが続いたことが主な要因です。製造業の根幹である安定生産が揺らいでしまえば、企業が収益を上げる力(稼ぐ力)が低下しかねません。私見ですが、国際的な競争力を維持するためには、AIを活用した生産の効率化やトラブルの未然防止を徹底し、高品質な製品を安定供給できる体制を確立することが、喫緊の課題と言えるでしょう。

北野社長の言葉から、日本の鉄鋼業が世界で生き残るための道筋が明確に見えてきました。それは、単なる規模の競争ではなく、長年培った**「質の高いデータ」という財産と「最先端のAI・IoT技術」**を融合させることで、中国勢が容易に追いつけない高度なノウハウと高付加価値製品を生み出し続ける、という戦略です。日本のモノづくりの真価が、今まさに試されていると言えるでしょう。

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