2019年6月5日、岩手県立博物館(盛岡市)は、遺跡から出土し自治体から保存処理を委託されていた金属製の文化財の一部が、当時の上席専門学芸員によって無断で切り取られていたという衝撃的な事実を公表しました。公表が遅れた背景には、博物館側がこの行為を法令違反に当たらないと判断した経緯があるようです。
この不適切な行為に関わっていたのは、当時61歳の赤沼英男・上席専門学芸員です。博物館の説明によれば、正当な手続きを経ることなく、少なくとも約60点もの貴重な資料が加工されていたとのこと。切り取りの目的は、文化財の保存方法を決定する際に、資料の状態をより詳細に精査するためであったとされていますが、正当な手続きを踏まない無断での切り取りは、資料を預かる機関として決して許される行為ではありません。
この問題が発覚したのは2014年8月のことでした。発覚後、博物館は赤沼学芸員に対し文書訓告処分を下しています。また、自治体からの新たな資料の受け入れを一時的に中断するという措置も講じました。しかしながら、この重大な事態について、博物館は長らく公表を控えていたのです。この対応には、文化財を大切にするという社会的な責任の観点から、疑問の声が上がることは避けられないでしょう。
文化財としての出土品、特に金属製資料の保存処理は非常に繊細で専門的な技術を要します。資料の劣化を防ぐための、例えば「さびの進行を止める処置」を施すことができる施設は、東北地方でも数カ所しかありません。岩手県立博物館は、1990年度から2014年度にかけて、平安時代などの貴重な文化財約800点を県内外の自治体から預かり、その保存処理を担う重要な役割を果たしていました。
SNS上では、この「文化財の不正加工」に対する反響が広がっています。「学芸員という専門職の立場を悪用した行為だ」「文化財を勝手に加工するなんて信じられない」といった厳しい意見が目立ちます。また、「公表が遅すぎたのではないか」と、博物館の対応の透明性を疑問視する声も多数見受けられます。文化財は過去の歴史を今に伝えるかけがえのない宝であり、その取り扱いには、より厳格な倫理と責任が求められるべきでしょう。
この事案は、博物館や学芸員といった専門職が、文化財という公共財を扱う上での規範や、資料の保存処理に関する手続きの徹底の重要性を改めて浮き彫りにしています。一度加工された文化財は元には戻りません。今回の事件を教訓として、二度とこのような不祥事が起こらないよう、文化財を取り扱う全ての機関において、厳正な管理体制が確立されることを強く望みます。
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