世界屈指の成長市場として注目を集めるインドですが、その空には暗雲が立ち込めています。2019年6月22日現在、インドの航空業界はまさに「利益なき拡大」という矛盾に直面していると言えるでしょう。記憶に新しい民間大手ジェット・エアウェイズの経営破綻に続き、今度は国営航空会社であるエア・インディアの経営危機が深刻化しています。フルサービスキャリア(機内食や受託手荷物などのサービスが運賃に含まれる従来の航空会社)として運営される同社ですが、台頭する格安航空会社(LCC)との激しい価格競争に晒され、毎年数百億ルピーもの赤字を計上しているのが実情です。
この状況に対し、SNS上ではインド国民や経済ウォッチャーから様々な声が上がっています。「国営企業だからといって、いつまでも税金で救済するのはおかしい」「サービスの質は悪くないが、価格でLCCに勝てないなら構造改革が必要だ」といった厳しい意見が目立ちます。一方で、「ナショナル・フラッグ・キャリア(国を代表する航空会社)としての誇りを守ってほしい」という切実な願いも見受けられますが、現実の数字は待ったなしの状況を示しているのです。
膨れ上がる累積債務と民営化の挫折
問題の根深さは、その負債額の大きさにも表れています。政府統計によれば、政府が51%以上を出資する国営企業は約260社存在しますが、そのうちエア・インディアを含む71社が赤字に陥っています。特にエア・インディアの累積債務は、経営破綻したジェット社をも上回る5000億ルピー近くに達しており、これは日本円にして約7800億円規模という途方もない金額です。これだけの巨額債務は、当然ながらインド政府の財政にとって極めて重い負担となっています。
モディ政権も決して手をこまねいていたわけではありません。2018年には、株式売却によるエア・インディアの民営化を試みました。しかし、結果は「買い手がつかず頓挫」という厳しいものでした。巨額の負債に加え、労働組合の強さや政府の影響力が残ることへの懸念から、投資家たちが二の足を踏んだことは想像に難くありません。まさに、売りたくても売れない「不良債権」と化してしまっているのが現状なのです。
モディ政権第2期におけるインフラ投資への影響
2019年5月に発足したばかりの第2次モディ政権は、2024年までにインフラ投資へ約160兆円という巨額の資金を投じる野心的な政策を掲げています。道路、鉄道、そして空港整備など、インド経済の底上げには欠かせない投資ですが、その財源確保が大きな課題となっています。公約を実現するためには、国庫を圧迫し続ける不採算国営企業の改革が急務であり、エア・インディア問題の解決は避けて通れない試金石となるでしょう。
私自身の見解としては、もはや「国営」という看板に固執する時代は終わったと考えます。航空業界は世界的に見ても競争が激化しており、迅速な経営判断が求められる分野です。政府の管理下で赤字を垂れ流し続けることは、本来インフラ整備や教育に使われるべき国民の税金をドブに捨てるようなものです。痛みを伴うとしても、完全民営化や抜本的な組織解体を含めたドラスティックな改革を断行しなければ、インドの空が真の意味で晴れ渡る日は来ないのではないでしょうか。

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