2019年6月28日、本日お届けするのは、外食産業界で熱い注目を集めるサガミホールディングス会長、鎌田敏行氏の「夢」と「改革」の物語です。かつて経営危機に瀕していた同社を、いかにして再建し、世界への扉を開いたのか。その劇的なドラマは、ビジネスパーソンのみならず、多くの人々に勇気を与える内容となっています。
時計の針を少し戻しましょう。2011年、鎌田氏はサガミチェーン(現サガミホールディングス)の社長に就任しました。当時のサガミは、激化する外食産業の競争の波に揉まれ、業績不振にあえいでいました。そこで白羽の矢が立ったのが、出資関係にあった伊藤忠商事で「外食産業チーム長」としての経験を持つ鎌田氏だったのです。
自らの報酬を半減!覚悟の「意識改革」が呼んだ奇跡
社長に就任した鎌田氏が最初に着手したのは、組織の抜本的な「意識改革」でした。しかし、言葉だけで人は動きません。彼が取った行動は、自身の役員報酬を半分返上するという驚くべきものでした。「本気度」を行動で示したこの決断には、SNS上でも「トップが身を切る姿勢こそがリーダーの鑑だ」「これなら社員もついていこうと思える」といった、称賛と共感の声が数多く上がることでしょう。
このトップの覚悟は、役員や現場の従業員にも伝播し、社内全体の空気が一変しました。全員で真剣な業務見直しが進められた結果、就任からわずか1年で、企業の本業の儲けを示す「営業損益」が赤字から黒字へと転換したのです。ただ、借金の返済や税金などを差し引いた「最終損益」までは黒字化できず、鎌田氏は翌年も報酬カットを断行しました。
そして就任2年目、ついに最終黒字を達成し、株主への配当を復活させる「復配」を実現させました。これは企業としての健全性を取り戻した証であり、株主にとってもこの上ない喜びだったはずです。「負けるはずがない」という鎌田氏の強い確信が、数字という揺るぎない結果として結実した瞬間でした。
パスタの本場で「そば」が勝利?ミラノ万博での挑戦
鎌田氏の視線は、国内の再建だけにとどまりませんでした。かつての上司である丹羽宇一郎氏の教えを胸に、「No.1ヌードルレストランカンパニー」という壮大なグループビジョンを掲げたのです。これは、そばやうどんといった和食麺だけでなく、ラーメンやパスタまでをも視野に入れた、世界規模の構想といえます。
その試金石となったのが、2015年に開催されたミラノ国際博覧会(ミラノ万博)でした。150年以上の歴史を持つ万博で初めて「食」がテーマとなったこの祭典に、サガミは果敢に出店しました。パスタの本場イタリアで、日本の「そば」がどこまで通用するのか。多くの人が固唾を呑んで見守ったことでしょう。
結果は、驚くべきものでした。日本館に出店した企業のなかで、サガミは6ヶ月間の営業を通じ、そばを中心としたメニューで売上トップという快挙を成し遂げたのです。「パスタの国でそばが行列を作った」という事実は、日本の食文化のポテンシャルを世界に証明する出来事であり、私自身も編集者として、このニュースには胸が熱くなる思いがします。
2020年東京五輪へ向けた「おもてなし」戦略
そして現在、鎌田氏が見据えているのは、来年に迫った2020年の東京オリンピック・パラリンピックです。サガミのお膝元である愛知県内では、モンゴルやカナダの代表チームが事前キャンプを行う予定となっており、ここでサガミ流の「おもてなし」が炸裂します。
食事の提供はもちろんのこと、そば打ち体験などを通じて、日本の食文化をアスリートたちに肌で感じてもらう計画が進んでいます。単に食事を出すだけでなく、文化体験として提供する姿勢には、「No.1」を目指す企業としての矜持が感じられます。
うどんやパスタの分野を見渡せば、遥か先を行く巨大企業の背中はまだ遠いかもしれません。しかし、「夢は大きい方がいい」と語る鎌田氏の言葉には、決して絵空事ではない重みがあります。規模を追うだけでなく、質と文化で世界一を目指すサガミホールディングスの挑戦から、今後も目が離せません。
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