福井県を拠点に急成長を遂げているドラッグストアチェーン「ゲンキー」が、驚くべき拡大戦略を打ち出しました。運営するGenky DrugStoresは、2019年07月19日に開催された記者会見にて、今後3年間で230店舗もの新規出店を強行する中期経営計画を発表したのです。これにより、2022年06月までに総店舗数は現在の約1.8倍にあたる463店へと膨れ上がる見通しとなっています。
今回の戦略で特に注目すべきは、石川県と愛知県への集中攻撃とも言えるドミナント戦略でしょう。ドミナント戦略とは、特定の地域に集中して店を構えることで、物流効率を高め、地域住民の認知度を一気に高める手法を指します。藤永賢一社長は、石川県で首位、愛知県で3位のシェアをもぎ取ると力強く宣言しており、地元勢や競合他社とのシェア争いは一段と激化しそうな気配です。
SNS上では、この強気な姿勢に対して「最近、近所にゲンキーが急に増えた理由がわかった」「薬だけじゃなく野菜も安いから助かる」といった驚きと期待の声が広がっています。一方で、「この短期間でこれだけの店を作って、スタッフの教育は追いつくのか」と、急拡大に伴うサービスの質を心配する鋭い意見も見受けられました。生活に密着した店舗だからこそ、消費者の視線は非常にシビアだと言えるでしょう。
成長の原動力となる「レギュラー店」の魔法
ゲンキーがこれほどのハイペースで出店を続けられる背景には、独自に開発した「レギュラー店」というシステムが存在します。これは約1000平方メートルの広さに、棚の配置や商品の並び順まで完全に統一した規格化店舗のことです。どの店に行っても同じ場所に商品があるため、顧客が迷わないのはもちろん、店舗運営の作業も完全に標準化されています。この仕組みが、驚異的な出店スピードを支える土台となっています。
この徹底した標準化により、従業員の教育コストを大幅に削減し、1人当たりの売り場面積で業界トップクラスの効率を実現している点には、編集部としても目を見張るものがあります。ドラッグストア業界は慢性的な人手不足に悩まされていますが、誰でもすぐに働ける仕組みを作ることで、その壁を乗り越えようとする経営センスは非常に合理的です。まさに「店舗の工場化」とも呼べる革新的なモデルだと言えるでしょう。
さらに同社は、ドラッグストアの枠を超えて「生鮮食品」の強化に舵を切っています。野菜や精肉、お惣菜を全店で展開し、スーパーマーケットの領域にまで踏み込んでいるのです。2019年06月末には、岐阜県安八町に約50億円を投じた巨大な配送・加工拠点「ゲンキー中部RPDC」を稼働させました。ここで一括調理や加工を行うことで、店舗側での作業をゼロにし、利益率を底上げする算段です。
増益への挑戦と立ちはだかる壁
ただし、この野心的な計画がすべて順風満帆というわけではありません。2019年06月期の決算では、売上高が初めて1000億円の大台を突破した一方で、純利益は前期比14%減の26億円と、数年ぶりの減益に沈みました。これは将来の飛躍に向けた「先行投資」が重くのしかかった結果です。具体的には、300名規模の新卒採用や、既存社員へのベースアップといった人件費、さらには店舗への冷蔵設備導入費用が利益を圧迫しました。
2020年06月期の出店計画を、投資バランスを考慮して当初の80店から50店へ下方修正するなど、足元を固める慎重な一面も見せています。しかし、藤永社長は「3年後には年間100店の出店体制を整える」と、アクセルを緩めるつもりはないようです。競合他社がひしめく中で、この大規模な投資が実を結び、計画通り売上高1500億円を達成できるかどうかが、同社の運命を分ける大きな岐路となるでしょう。
個人的な見解としては、単なる安売り店ではなく、食品スーパーの利便性とドラッグストアの効率性を融合させたゲンキーのモデルは、地方の買い物難民を救うインフラになる可能性を秘めていると感じます。多額の負債やコスト増を厭わず、未来のシェアを取りに行く「攻めの経営」が、保守的なドラッグストア業界にどのような風穴を開けるのか、2022年までの動向から目が離せそうにありません。
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