日産自動車が直面する「拡大路線の代償」とは?2019年4-6月期決算で見えた米国市場と新興国戦略の深い溝

日本の自動車産業を牽引してきた日産自動車が、今まさに歴史的な岐路に立たされています。2019年07月25日に発表された2019年04月01日から06月30日までの連結決算によりますと、本業の儲けを示す営業利益はわずか16億円となり、前年の同じ時期と比べて99%も減少するという衝撃的な結果となりました。この驚くべき数字を前に、SNS上では「技術の日産はどこへ行ったのか」「あまりに急激な落ち込みで将来が不安だ」といった、ブランドを愛するファンからの悲鳴に近い声が次々と上がっています。

この業績低迷の引き金となったのは、かつて推し進めてきた「世界規模での拡大路線」が裏目に出たことにあるでしょう。特に2000年代、日産はインドやインドネシア、ブラジルといった成長著しい新興国へ積極的に進出し、工場を次々と建設して生産能力を増強してきました。しかし、期待に反して現地の景気は後退してしまい、莫大な投資をした設備が十分に活用されない「稼働率の低迷」という重い課題が浮き彫りになったのです。現在は、この余剰となった生産能力をいかに整理するかが、経営の大きな焦点となっています。

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米国市場での「値引き依存」が招いたブランドの地盤沈下

新興国での苦戦を補うために日産が選択した道は、主力であるアメリカ市場でのシェア拡大でした。しかし、その手法は「販売奨励金(インセンティブ)」という、ディーラーへ支払う多額の補助金を積み増すことで強引に安売りを行うものだったのです。2018年11月には1台あたり4574ドルもの奨励金を投入し、ライバルであるトヨタ自動車の約1.8倍にまで膨れ上がりました。一時的に販売台数は稼げたものの、消費者の間には「日産は安く買える車だ」というイメージが定着してしまいました。

ここで注目すべきは、車の「高齢化」という問題です。新車の開発サイクルが滞り、最新の魅力に欠けるモデルを無理に売ろうとした結果、さらに値引きを重ねるという悪循環に陥っています。2019年06月には奨励金を絞る動きも見せましたが、途端に販売が激減した現実は、値引きなしでは選んでもらえないというブランド力の低下を残酷なまでに物語っています。SNSでは「安売りイメージがついて中古車の下取り価格が下がるのは困る」といったユーザーの切実な不満も散見されます。

さらに深刻な懸念は、車を月々定額で貸し出す「リース事業」への波及です。リース契約が終わった車は中古車として売却されますが、新車を安売りしすぎると中古車の価値も連動して下がってしまいます。もし中古車相場が、あらかじめ見込んでいた価値を下回れば、その差額はすべて日産の損失となって跳ね返ってきます。1990年代の経営危機や2008年のリーマン・ショック時にも、このリース損失が経営を圧迫した苦い経験がありますが、現在の事業規模は当時よりも拡大しており、リスクは一段と高まっています。

かつては9%近くを誇った売上高営業利益率も、2018年度には2.7%まで沈み込みました。世界の名だたる競合他社が利益率を高める中、日産だけが取り残されている状況は、編集部としても非常に危機感を覚えます。過度な販売目標を追い求めた「拡大のツケ」はあまりに大きく、真の意味で「稼ぐ力」を取り戻すまでには、相当な忍耐と抜本的な改革が必要になるはずです。かつての輝きを取り戻すためにも、今は目先の台数ではなく、一台一台の価値を丁寧に見直すべき時期に来ているのではないでしょうか。

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