日本中が空前のインバウンド、すなわち「訪日外国人観光客」による熱狂に包まれています。日本政府観光局(JNTO)が発表したデータによると、2019年01月01日から2019年06月30日までの半年間で、訪日外国人数は前年同期比4.6%増の1663万人に達しました。この勢いは衰えることを知らず、まさに日本列島が世界から注目されるゴールデンタイムを迎えているといえるでしょう。
しかし、政府の統計だけでは見えてこない、市区町村別の詳細な動きに目を向けると、意外な事実が浮かび上がってきます。NTTドコモの子会社が提供するデータを駆使し、2018年01月01日からの一年間の動向を分析したところ、観光客の「訪れる場所」と「お金を使う場所」が大きく乖離していることが判明しました。この現象は、これからの日本経済を考える上で見逃せない重要なキーワードとなります。
西日本が人気の中心に?加速する訪問エリアの分散化
かつてのインバウンド需要といえば東京周辺が中心でしたが、現在はその勢力図が劇的に塗り替えられています。2018年の一年間における延べ訪問客数を過去と比較すると、東日本や中日本の伸び率が20%台にとどまる一方で、西日本は41%という驚異的な成長を記録しました。世界的な旅行ブームの中で、多くの旅人が日本のより深い魅力、つまり「西の文化」を求めて足を伸ばしている状況が伺えます。
中でも圧倒的な存在感を放っているのが大阪府大阪市中央区です。なんと訪日客の3人に1人がこのエリアを訪れているというデータもあり、道頓堀周辺の活気はまさに「インバウンドの聖地」と呼ぶにふさわしい盛り上がりを見せています。SNS上でも「大阪の食い倒れ文化は最高」「どこを歩いても多国籍な言語が飛び交っていてエネルギーを感じる」といったポジティブな投稿が相次ぎ、関西エリアの注目度は右肩上がりです。
買い物は「渋谷一強」!東京に一極集中する消費のカラクリ
ところが、観光客の足が西へ向いているのに対し、消費の面では全く異なる景色が広がっています。飲食やショッピングにおける支出額を詳しく調査すると、東京都渋谷区が他の追随を許さない「一強」状態を維持しているのです。訪日客は西日本で景色や文化を楽しみ、最終的な「爆買い」や高級ブランド品の購入は、品揃えが豊富な東京で行うという、いわば消費のねじれ現象が発生しています。
この「東西格差」ともいえるいびつな構造は、日本の観光戦略における大きな課題といえるでしょう。私は、観光客が地方を訪れるだけでなく、その土地で財布を開きたくなるような仕組みづくりが急務であると考えています。西日本が持つ素晴らしい観光資源を、いかにして「高単価な体験価値」へと昇華させ、地域経済の潤いに直結させるかが、持続可能な観光立国への鍵を握るに違いありません。
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