北海道大学の広大な敷地、北キャンパスに佇むインキュベーション施設「北大ビジネス・スプリング(以下、北大BS)」が、2019年6月7日に設立10周年を記念するフォーラムを開催しました。これは、地域経済の活性化と技術革新を牽引してきた、その大きな功績を讃える記念すべきイベントと言えるでしょう。2008年12月の開設以来、北大BSは北海道のスタートアップシーンにおいて、欠かせない存在として確固たる地位を築き上げてきたのです。
この施設からは、これまでに39もの企業が卒業し、新たなステージへと飛び立っています。そして、現在も23社が精力的に活動しており、その入居率は驚異の100%を維持しているそうです。この満室状態こそが、北大BSが提供する研究環境やサポート体制への、企業からの強い期待と信頼の証に他なりません。SNS上でも、「北海道の技術力が世界に羽ばたいている!」「次のユニコーン企業はここから出るのでは?」といった、熱い期待の声が多く寄せられています。
北大BSから巣立った企業の中には、特に注目すべき成功事例が複数あります。たとえば、農業分野での労働負担を軽減するアシストスーツで知られるスマートサポート社(札幌市)や、針を使わずに採血なしで脂質検査ができる画期的な装置を開発したメディカルフォトニクス社(同)などが挙げられます。これらの企業が生み出す、社会的な課題解決に直結するようなイノベーション(技術革新)は、まさに北大の知が集積された結果だと言えるでしょう。
また、現在入居している23社のうち、実に10社が東京をはじめとする道外に本社を置く企業であるという点も特筆すべき事実です。これは、北海道大学が持つ先進的な研究成果や、産学連携のノウハウを活用したいというニーズが、全国規模で高まっていることを示唆しています。大学の研究室で生まれた知見をビジネスへと昇華させる「技術シーズ」への関心が、地域や業界の垣根を越えて拡大している証拠に違いありません。
地域経済を支える「イノベーション拠点」としての未来
北大BSの周辺には、北海道科学技術総合振興センター(ノーステック財団)が運営する「コラボほっかいどう」のような、産学官連携を促進する施設も集積しています。このような相乗効果を生む環境は、地域全体が一体となってイノベーションのエコシステム(生態系)を構築しようとする、強い意志の現れです。中小企業基盤整備機構の戸田直隆・北海道本部長は、記念フォーラムの冒頭挨拶で「この北大北キャンパスを、世界からも、道内の若者からも注目を浴びる一大拠点とするよう、中小機構も貢献していく」と、力強く意気込みを表明されました。
私が編集者としてこのニュースに触れて強く感じるのは、地方の大学が持つ「知の力」が、いかに地域と日本経済の未来を左右するかということです。北大BSは単なるオフィススペースを提供する場所ではなく、研究者と起業家、そして投資家が出会い、未来の価値を生み出す「触媒」として機能しています。この成功は、他の地域の大学や自治体にとっても、産学連携を成功させるための重要なモデルケースになるでしょう。今後、この「北大発イノベーション」のムーブメントが、国内外のさらなる優秀な人材と資本を呼び込み、北海道を名実ともに世界的な技術開発のハブ(拠点)へと押し上げることを期待しています。
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