インドの空を彩ってきた景色が、2019年に入り劇的な変貌を遂げています。長らく民間航空の雄として君臨し、経済自由化の象徴でもあったジェット・エアウェイズが経営破綻という衝撃的な結末を迎えました。この巨大なライバルの退場により、インディゴ(InterGlobe Aviation)やスパイスジェットといった格安航空会社(LCC)が、かつてないほどの「棚ぼた」的な利益を享受している状況です。
2019年09月15日現在の報告によれば、業界最大手のインディゴは2019年04月01日から06月30日までの純利益が前年同期比で約43倍という驚異的な数字を叩き出しました。同社のロノジョイ・ドゥッタCEOも、競合の運航停止が業績を強力に押し上げたことを隠していません。ネット上でも「LCCの一人勝ちが始まった」と、この劇的な展開に驚きの声が広がっています。
巨大企業の空席を奪うLCCの猛攻と新路線拡大
空前の成長を遂げているのは最大手だけではありません。ライバルのスパイスジェットも、2019年04月01日から06月30日までの決算で過去最高益を更新しました。運賃が平均して10%以上も上昇したことは、同社にとって非常に大きな追い風となったようです。かつて赤字に苦しんでいた姿はどこへやら、アジャイ・シン共同創業者は「完全な成長軌道に乗った」と、自信に満ちた声明を発表しました。
この勢いは国内にとどまらず、国際線の空へと波及しています。スパイスジェットは2019年07月、バングラデシュのダッカや、サウジアラビアのジェッダ、リヤドといった中東主要都市への新規就航を果たしました。LCC特有の低価格モデルで巡礼需要を囲い込む戦略は、まさに同社の独壇場です。一方で、インド最大財閥系のビスタラも2019年08月にシンガポール便を開始するなど、業界全体が「ジェット社なき後」のパイの奪い合いに奔走しています。
栄華の裏に潜む「LCC視界不良」の不気味な予兆
しかし、航空市場が右肩上がりで成長し、2018年には前年比19%増の旅客数を記録したからといって、手放しで喜べる状況ではないでしょう。なぜなら、インドの空は常に「価格競争」という激しい乱気流にさらされているからです。ジェット・エアウェイズが破綻した根本的な原因も、台頭するLCCとの低価格競争で体力を消耗し、不安定な原油価格を運賃に転嫁できなかったことにあります。
格付け会社のアナリストであるアシシ・ナイナン氏が指摘するように、今後3~4カ月以内には再び激しいシェア争いが再燃するでしょう。航空運賃のさらなる低価格化が進めば、せっかく手にした「果実」もあっという間に腐りかねません。SNSでは「安くなるのは嬉しいが、また破綻する会社が出るのでは」といった、持続可能性を懸念する冷静な意見も目立ち始めています。
私自身の視点から言えば、現在の好調はあくまで一時的な均衡にすぎないと感じます。航空業界における「シェア」とは、利益とリスクの表裏一体です。各社が競って国際線を拡大し、機体を増やし続ける中で、もし原油相場が急騰すれば、現在の利益は一瞬で消失するリスクを孕んでいます。インドという巨大市場で生き残るためには、単なる価格の叩き売りではなく、真の意味での経営効率化が問われる時代が到来しているのです。
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