【神宮第二球場】野球とゴルフが同居する「昭和の奇景」が終幕へ。聖地の歴史と2019年12月の別れ

都会の喧騒に包まれた東京・新宿の一角で、快音とともに白球が空を舞う光景をご存じでしょうか。一見すると普通の野球場に見える「神宮第二球場」ですが、実は世界でも珍しい、ゴルフ練習場としての顔を併せ持つスポットです。1961年に誕生したこの球場は、1973年から一塁側の内野席を打撃練習用のレーンに改装し、二足のわらじを履くユニークな運営を続けてきました。

普段はゴルフ愛好家がグラウンドへ向かってショットを放ち、高校野球の試合がある日だけ「野球場」としての本来の姿を取り戻します。試合開始の前には、職員の方々が散らばったゴルフボールを手作業で回収するという、なんとも人間味あふれる準備が行われるのです。SNSでは「野球の試合中にゴルフボールが落ちているのはここだけ」「手書きのスコアボードが味がありすぎる」と、その独特な情緒を愛でる声が絶えません。

スポンサーリンク

数々の名勝負と「魔物」が潜むグラウンドの記憶

この球場は、高校球児たちにとっての聖地でもありました。日本ハムで活躍する清宮幸太郎選手が高校通算1号本塁打を放ったのも、2015年のこの場所です。一方で、ゴルフ練習場を兼ねているがゆえの「魔物」も潜んでいました。帝京高校の名将・前田三夫監督は、かつてゴルフボールが作った芝の窪みに外野手が足を取られ、痛恨の失点を喫した思い出を大切に語られています。

2019年9月28日現在、この歴史ある球場は大きな転換期を迎えています。2020年の東京五輪・パラリンピック開催に伴う再開発計画により、建物の解体が決定しているためです。長年、神宮外苑花火大会の打ち上げ拠点としても親しまれてきましたが、その役割も終わりを告げようとしています。時代の流れとはいえ、昭和から続くこの「奇景」が消えてしまうのは、一人の編集者としても非常に寂しい限りです。

ゴルフ練習場としての営業は、機材置き場への転用を控えた2019年12月末をもって一旦休止される予定です。10月からは、この場所で開催される「最後」の秋季大会本大会が始まります。球児たちの涙とゴルフの打球音が混ざり合う不思議な空間で、彼らがどのようなドラマを見せてくれるのでしょうか。私たちは、歴史の目撃者として、その最後の一瞬までこの場所の躍動を目に焼き付けておくべきでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました