介護業界に今、大きな変革の波が押し寄せています。2019年10月02日、介護サービスを展開する大手各社が、経験豊富な介護福祉士らを中心とした大規模な賃上げに踏み切ることが明らかになりました。対象となる職員数は約5万4000人にも上る見通しで、深刻化する人手不足を背景に、各社は「選ばれる職場」としての魅力を必死にアピールしています。SNS上では「ようやく正当な評価がされるのか」と期待する声が上がる一方で、「一部のリーダー層だけでなく全体を底上げしてほしい」といった切実な意見も飛び交っています。
今回の賃上げを牽引するのは、SOMPOホールディングスをはじめとする業界大手です。同社は特定の地域や職種において、リーダー職の年収を最大で約80万円、その他の職員でも最大約65万円引き上げるという、驚きのプランを打ち出しました。上昇率は2.4%から最大23%に達し、これまでの常識を覆す規模となっています。同社はさらに2022年に向けて、リーダー職の年収を看護師と同等の420万円から475万円水準まで引き上げる計画を立てており、介護職のステータス向上を本気で目指す姿勢が伺えます。
他社も追随するように、処遇改善の具体策を公表しています。ベネッセホールディングスでは、勤続10年以上のリーダー職のうち、年収500万円以上の層を現在の70%から84%まで拡大させる方針です。また、学研ホールディングスも介護報酬の加算額を上回る独自の賃上げを断行します。こうした動きの背景には、2019年10月の介護報酬改定で導入された「特定処遇改善加算」があります。これは、消費税増税分を財源に、現場を支えるリーダー級職員の給与を全産業平均並みに引き上げることを目的とした公的な支援制度です。
ここで注目すべき「介護報酬」とは、事業者が利用者にサービスを提供した際に、その対価として支払われる費用のことです。国が定めるこの報酬が、職員の給与の原資となります。2017年のデータによれば、介護職員の平均月給は約27万4000円。全産業平均の36万6000円や、准看護師の33万8000円と比較しても依然として低く、この格差が離職の大きな要因となってきました。18年度の有効求人倍率が3.95倍という異常な高水準にある中、給与の底上げはもはや避けられない経営課題といえるでしょう。
一方で、賃上げを見送る企業も存在します。ウチヤマホールディングスは、加算制度だけでは全職員に還元できず、社内に不公平感が生まれる懸念から慎重な姿勢を見せています。編集者の視点から言えば、この懸念は極めて現実的です。特定の資格や経験を持つ層だけを優遇すれば、現場のチームワークに亀裂が入りかねません。しかし、2025年度までに55万人もの人材が不足すると試算される今、まずは「ベテランが夢を持てる職業」に作り替える突破口が必要なのも事実です。制度の歪みをどう埋めるか、企業の経営手腕が問われています。
人手不足は、単なる労働問題に留まらず、私たちの老後を直撃する死活問題です。現在、スタッフが足りないために、空室があるにもかかわらず入居を受け入れられない老人ホームが続出しています。介護施設には入居者数に応じた職員配置基準が法律で定められているため、基準を割り込めば運営そのものができません。今回の賃上げが単なる一時的なブームに終わらず、介護職が「専門職」として正当に報われる文化の定着につながることを切に願います。誰もが安心して老いを迎えられる社会を作るため、この処遇改善が大きな一歩となるはずです。
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