伊勢丹メンズ館に異変?「男物」を選ぶ女性が急増するジェンダーレス新時代の幕開け

ファッションの聖地として知られる伊勢丹新宿本店メンズ館で、今、興味深い現象が起きています。2019年3月に実施された大規模なリニューアル以降、カード会員の売上データにおいて、女性客による購入額が前年比で約2%増加していることが判明しました。かつては男性への贈り物を探す場所だったこの空間が、今や女性たちが「自分のため」にショッピングを楽しむ場所へと変貌を遂げているのです。

2003年の開業当時、メンズ館の利用者の約70%は女性であり、その多くは父の日やバレンタインに向けた「代理購買」が目的でした。しかし、時代の移り変わりとともにギフト需要は落ち着きを見せ、2018年には男女比率がほぼ半々にまで変化しています。かつて掲げられていた「男である幸福」というスローガンは、現代の多様なニーズを前に、少しずつその役割を終えようとしているのかもしれません。

こうした変化の背景には、ファッション業界における「ジェンダーレス」の加速があります。これは、男女の境界を取り払ったデザインや考え方を指す専門用語です。伊勢丹の紳士MD統括部でエディターを務める落合将一氏は、商品の色のバリエーションが増え、性別を問わないデザインが浸透してきたことが、女性の実需を掘り起こしていると分析しています。

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SNSが変えた「サイズ感」と「ブランド選び」の常識

最近のトレンドである、あえて大きめのシルエットを楽しむ着こなしも、この動きを後押ししているでしょう。女性が男性向けの小さめサイズを「オーバーサイズ」として取り入れるケースが目立っており、1階の雑貨売り場では革小物やコスメを自分用に購入する女性の姿が日常風景となっています。SNSでは「あえてメンズを着るのが可愛い」といった投稿が相次ぎ、大きな反響を呼んでいます。

注目を集めているのは「sacai(サカイ)」や「MARNI(マルニ)」といった、独自の世界観を持つブランドです。また、2階の「kolor(カラー)」のように、エッジの効いたデザインを展開するラベルでは、性別の枠を超えて「サイズが合えば着る」という自由な選択がなされています。もはや、売り手側が設定した「メンズ・ウィメンズ」というカテゴリーは、感度の高い消費者にとって意味をなさなくなっているのです。

情報の源泉が従来のファッション誌からSNSへと移行したことも、この変化に拍車をかけています。プロの編集者が提案するスタイルよりも、一般のユーザーが発信する「メンズアイテムの着こなし術」が支持される時代になりました。専門家と消費者の垣根が消えたことで、より直感的で自由なファッションの楽しみ方が広がっている点は、非常にポジティブな流れだと私は感じます。

伊勢丹メンズ館は、新たなステートメントとして「男として、そして、人として」を掲げ、多様性への理解を深めています。特定の層をターゲットに絞りすぎるのではなく、一人の「人間」としての魅力を引き出す姿勢こそが、これからの小売業には求められるはずです。海外ブランドからも境界線の撤廃を問われる今、数年後には「メンズ館」という名称自体が過去のものになっているかもしれません。

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