2019年という年は、セクシュアルマイノリティの権利を勝ち取る象徴となった「ストーンウォールの反乱」からちょうど50周年を迎える、極めて意義深い節目に当たります。ニューヨークで開催された恒例のプライドパレードは、約700団体、15万人以上が参加する空前の規模となりました。SNS上でもこの熱狂は拡散され、「自分らしく生きる姿に勇気をもらった」といった感動の声が世界中から寄せられており、社会の意識が劇的に変化している様子がうかがえるでしょう。
こうした社会運動の盛り上がりは、今や巨大な経済活動へと姿を変えています。その中心を担うのが「全米ゲイ&レスビアン商工会議所(NGLCC)」です。この組織は、LGBTQ+(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーなどの性的少数者)が経営する企業に対して「LGBTビジネスエンタープライズ」という独自の認定証を発行しています。2017年と比較して、認定を取得する企業は28%も増加し、現在は1100社にまで達しているのです。
大手企業との架け橋になる「認定制度」と人脈構築の進化
ここで注目すべきは、この認定を受けた会社が、名だたるグローバル企業への「ビジネスサプライヤー(資材やサービスの供給業者)」として公式に認められる点でしょう。つまり、多様性を重視する大手企業と、LGBT経営者のビジネスを結びつける強固なエコシステムが構築されているのです。現代のビジネスシーンにおいて、もはや性的指向や性自認は隠すべきものではなく、むしろ信頼を築くためのアイデンティティの一つとして機能し始めていると言えるのではないでしょうか。
さらに、デジタル空間での人脈作りも加速しています。代表的なプラットフォームが、デニス・ベルコ氏によって設立された「アウトビューロ・ドット・コム」です。2008年にビジネスSNSのリンクトイン内で産声を上げたこのグループは、現在4万7千人ものメンバーを抱える世界最大級のLGBTコミュニティへと成長を遂げました。2018年には独自のオンラインネットワークも始動しており、国境を超えたプロフェッショナル同士の繋がりが日々生まれています。
こうした動きの背景には、企業の切実な戦略が見え隠れします。LGBT層の年間購買力は9000億ドル(日本円で約100兆円)以上とも言われ、その市場規模は無視できないほど巨大です。しかし、私が考えるに、企業が熱心なのは単なる「売上」のためだけではありません。ダイバーシティ(多様性)に寛容であるというブランドイメージを確立することは、変化の激しい時代において優秀な人材を惹きつけ、定着させるための「生存戦略」なのです。
JPモルガンやIBMといった巨大企業は、早くからLGBT施策でリーダーシップを発揮し、その先進的な姿勢を広く世に示してきました。2019年10月16日現在、職場で自分を偽ることなく、ありのままの姿で活躍できる時代がようやく本格的に到来したと言えます。企業が個人の尊厳を尊重することは、もはや慈善活動ではなく、持続可能な成長のための「常識」となりました。この流れが日本国内でもさらに加速することを切に願ってやみません。
コメント