産業用電源装置の大手メーカーであるコーセル株式会社が、2019年6月19日に発表した2019年5月期の連結決算は、純利益が前の期と比べて35パーセントもの大幅な減少となり、21億円で着地いたしました。この業績悪化の主要因は、全世界の経済を揺るがしている「米中貿易摩擦」の影響が、エレクトロニクス業界に深刻な影を落としたことにあります。特にアジア市場では、半導体製造装置への投資が先送りされた結果、同社への受注が急激に落ち込んでしまったのです。
半導体製造装置は、スマートフォンやパソコン、サーバーなどに使われる電子部品の核となる**半導体(はんどうたい)を造るための機械のことで、その投資が滞ると、その関連部品である電源装置の需要も大きく減ってしまいます。さらに、顧客企業が過剰になった在庫を減らそうと発注を絞り込んだ在庫調整(ざいこちょうせい)の影響も加わり、業績を押し下げる大きな要因となってしまいました。インターネット上では、「やっぱり米中摩擦の影響は大きい」「エレクトロニクス業界は厳しい状況が続きそうだ」といった、業界の先行きに対する懸念の声が多く見受けられます。
買収効果の一方で、米中摩擦が需要を直撃
一方で、売上高については前の期より5パーセント増加し、278億円を達成しています。これは、2018年にスウェーデンの同業大手である「パワーボックス インターナショナル AB」を買収したことが大きく寄与した結果です。しかし、この買収に伴う費用もかさみ、営業利益は前の期比で29パーセント減の33億円にとどまる結果となりました。
地域別に見ると、特に日本と韓国では、半導体製造装置の関連の需要が大幅に減少しています。また、中国市場においても、工場や生産プロセスを自動化するための機器、すなわちファクトリーオートメーション(FA、Factory Automation)**機器関連の需要が大きく落ち込んでしまいました。コーセルの谷川正人社長も、「エレクトロニクス業界では、米中貿易摩擦による影響が拡大し続けている状況です」と現状の厳しさを語っているのです。
私の編集者としての意見ですが、コーセルは海外企業の買収により売上高を伸ばすという戦略的な手を打ちましたが、それを上回る規模で、米中貿易摩擦という国際的な大きな波に飲み込まれてしまったと言えるでしょう。地政学的リスク(ちせいかく的リスク)が、特定の産業にこれほどまでに直接的な打撃を与えるという事実を、改めて認識させられる決算内容でございます。企業努力だけではどうにもならない外部環境の厳しさが、鮮明に浮かび上がってきました。
業績の下振れ予想と業界の行方
さらに同社は、2020年5月期の業績見通しについても慎重な姿勢を示しており、純利益は前期比からさらに25パーセント減の16億円、売上高も3パーセント減の270億円と、厳しい数字を予想している模様です。この下方修正は、米中貿易摩擦の影響が今後も長期化する可能性を示唆していると考えられます。
2019年現在、この貿易摩擦は単なる関税の引き上げに留まらず、先端技術分野における主導権争いの様相を呈しています。これにより、同社のような電子部品メーカーが主要な顧客とする半導体やFAといった分野では、投資の様子見やサプライチェーン(供給網)の変更といった動きが加速する可能性が予想されます。コーセルの今後の経営戦略や、市場がこの状況にどう反応していくのか、引き続き注意深く見守っていく必要がありそうです。
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