東南アジアの観光・外食シーンを牽引するタイのホテル大手、マイナー・インターナショナルが驚きの戦略に打って出ました。同社は2019年11月25日、タイ国内で絶大な人気を誇る韓国風フライドチキンチェーン「ボンチョンチキン」を運営するチキンタイム社の買収を発表したのです。買収額は約72億円(20億バーツ)にのぼり、この巨額投資からは同社が飲食店事業にかける並々ならぬ情熱が伝わってきます。
今回の買収によってマイナー社の傘下に入る「ボンチョンチキン」は、サクサクとした食感と濃厚なタレが特徴の韓国発祥ブランドです。現在は米国やフィリピンなど世界9カ国で展開されており、タイ国内でも40店舗以上を構える超人気店として知られています。SNS上では「あの味がマイナーの資本でさらに広がるのは嬉しい」「どこでも食べられるようになるのが待ち遠しい」といった、ファンの期待に満ちた声が溢れかえっています。
ここで注目したいのが、マイナー社が目指す「ポートフォリオの多角化」という戦略です。ポートフォリオとは、企業が持つ事業の組み合わせを指します。同社は売上高の6割をホテル事業が占めていますが、あえて飲食店事業を強化することで、観光需要の変動に左右されにくい安定した経営基盤を築こうとしているのでしょう。一見すると畑違いに見えるホテルとチキンですが、顧客の「食」を支えるという意味では強力な相乗効果が期待できます。
飲食店事業を統括するポール・ケニー氏は、タイ人の食文化において鶏肉がいかに重要なタンパク源であるかを強調しています。宗教的な制約が少なく、老若男女に愛される鶏肉料理は、タイ市場において最も成長の可能性を秘めたジャンルといっても過言ではありません。ヘルシー志向とジャンクな満足感を両立させる韓国チキンのブームは、一時的な流行を超えて、今やタイの食生活の一部として定着しつつあるようです。
編集者の視点から見ても、今回の買収は極めて理にかなった一手だと感じます。単なる流行を追うのではなく、世界的なブランド力を持つ「ボンチョン」を手にすることで、マイナー社はアジア全域でのプレゼンスをさらに高めることになるでしょう。高級ホテルからカジュアルなチキンまで、消費者のあらゆるライフスタイルを網羅しようとする彼らの野心的な姿勢は、今後のタイ経済を活性化させる大きな原動力になるに違いありません。
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