日本の医療を支える重要なインフラである「地域医療機能推進機構(JCHO)」を舞台に、信じられないような不透明な取引が浮上しました。2019年11月28日、JCHOへの取材により、過去3回行われた大規模な医薬品入札において、落札者がすべて業界大手4社に独占されていたことが判明したのです。私たちは、病気を治すための薬が健全な競争のもとで供給されていると信じていますが、その裏側では巨大な利権が動いていたのかもしれません。
今回、公正取引委員会のメスが入ったのは、メディセオ、アルフレッサ、スズケン、そして東邦薬品という、誰もがその名を知る医薬品卸の「ビッグ4」です。2019年11月27日、公取委はこれら4社に対し、独占禁止法違反の疑いで一斉に強制調査へと踏み切りました。SNS上では「やはり大手同士で結託していたのか」「税金や保険料が不当に吸い上げられている」といった、驚きと憤りの声が急速に広がっています。
巧妙に仕組まれた「共同入札」の罠と実態
JCHOが採用している「共同入札」とは、運営する全国の病院で必要な医薬品を本部が一括して発注する仕組みのことです。本来はスケールメリットを活かしてコストを抑えるための良質なシステムですが、2014年の発足以来、2年ごとに行われた入札では不自然な結果が続いていました。医薬品のカテゴリーごとに分けられた各群で、まるで示し合わせたかのように4社が受注を分け合っていた疑いが持たれています。
驚くべきはその契約金額の大きさで、2014年当時の契約総額は800億円を超え、1社あたりの受注額は180億円から260億円にものぼりました。その後、2016年や2018年の入札においても、各社が全体の2割から3割という一定のシェアを維持し続けていたのです。自由な競争が行われる「一般競争入札」という形式をとりながら、そのあまりに巨大な発注規模ゆえに、事実上この4社以外は参入できない「出来レース」状態だったと言えるでしょう。
独占禁止法が禁じる「不当な取引制限」とは
ここで問題となっている「不当な取引制限」とは、事業者が互いに連絡を取り合い、受注価格や数量をあらかじめ決めてしまう行為を指します。いわゆる「談合」は、企業が本来競い合うべき努力を放棄し、不当に高い価格を維持することで、消費者や発注者に損害を与える許されない行為です。公取委は、2018年の入札だけでなく、それ以前からも組織的な受注調整が常態化していたとみて、刑事告発も視野に入れた厳重な調査を進める方針です。
私は、今回の事件は単なる企業の不正という枠に留まらない、深刻な社会問題だと考えます。医薬品は人の命に関わる公的な性質が強いものであり、その流通を担う大手企業には高い倫理観が求められるはずです。限られた医療予算が適切に使われず、企業の利益確保のために談合が繰り返されていたのであれば、それは国民一人ひとりに対する背信行為に他なりません。透明性のあるクリーンな業界への脱皮が今、強く求められています。
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