最近では「レス」という言葉を耳にする機会が増えました。ワイヤレスやボーダーレスなど、不要なものを削ぎ落とす進化が進む中で、今もっとも注目されているのは「キャッシュレス」でしょう。これは文字通り現金を必要としない決済手段のことで、財布の中身を気にせず買い物や公共料金の支払いができる便利な仕組みを指します。
スーパーのレジで小銭が見つからず、結局大きな札を出して大量のお釣りを受け取るといった心理的ストレスからも、私たちは解放されつつあります。支払いに要する時間が短縮されることで心にゆとりが生まれ、日々の生活がより円滑に回り始めるのは、まさに現代社会における大きな恩恵といえるのではないでしょうか。
ある大学生から聞いた話では、最近のアパレルショップには驚くべき形態が登場しているようです。その店舗には販売員が一人もいなというのです。客は商品のバーコードを自分でスキャンし、スマホのQRコードをかざして決済を済ませます。すると什器の裏からショップ袋が現れ、自分で商品を詰めて店を後にする、完全無人のシステムが構築されています。
この仕組みに対し、若者たちは「店員と話さなくていいから楽だ」という意外な本音を漏らしています。実は、20代を中心とした約120名に調査を行ったところ、なんと約8割が「店員とコミュニケーションをとりたくない」と回答しました。このように、特定の場面で対人接触を避ける現象は「コミュレス」と呼ばれ、静かに広がっています。
SNSが招く「心地よい関係」だけの危うい世界
コミュレスとは、単に会話を拒絶することではありません。むしろ、コミュニケーションのあり方が極端に「偏っている」状態を指します。SNSの世界を見渡せば、かつてないほど膨大な言葉が飛び交っていますが、それはあくまで自分が「許容できる相手」との間に限定された極めて狭い交流に過ぎないのです。
アメリカの大学では、こうした状況を「GF(グッド・フィーリング)現象」として注目しています。これは、自分が良好な印象を抱く相手とだけ繋がり、少しでも不快感や違和感を覚えると即座に関係を遮断してしまう傾向のことです。心地よさだけを追求した結果、他者との摩擦を避けるコミュレス状態が加速しているといえるでしょう。
SNS上では「接客されるのが苦痛」「自分のペースで買い物したい」といった無人店舗を歓迎する声が目立ちます。しかし、未知の価値観を持つ他者と接し、新しい関係を築くことこそが人間社会の醍醐味ではないでしょうか。効率化の裏で、自分にとって都合の良い相手だけを選ぶ「許容」が独り歩きしている現状には、一抹の不安を覚えずにはいられません。
便利なテクノロジーが対人スキルの低下を招くのであれば、それは果たして本当の「進化」と呼べるのでしょうか。キャッシュレスによって生まれた心の余裕を、あえて「見知らぬ誰かと理解し合うためのエネルギー」として使う勇気が、今こそ私たちに求められているのかもしれません。
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