秋の深まりとともに、2019年もいよいよ芸術の季節が本格的な盛り上がりを見せています。現在、上野の東京都美術館では「コートールド美術館展 魅惑の印象派」が開催されており、ロンドンから届いた至宝たちが多くの来場者を圧倒しています。今回の目玉は何といっても、普段は門外不出とされるマネ晩年の傑作「フォリー=ベルジェールのバー」の来日でしょう。
ロンドンのコートールド美術館が改修工事中という好機により、2019年12月15日までの期間限定で奇跡的な展示が実現しました。SNSでは「鏡の描写に吸い込まれそう」「本物の筆致を間近で見られる贅沢」といった感動の声が溢れています。セザンヌの「カード遊びをする人々」やモディリアーニの艶やかな「裸婦」など、約60点もの名品が並ぶ光景は圧巻の一言です。
実業家サミュエル・コートールドが収集したこれらのコレクションは、単なる名画の羅列ではなく、彼の深い美意識を感じさせるものばかりです。印象派やポスト印象派といった、19世紀末から20世紀初頭にかけてフランスで巻き起こった革新的な芸術運動の息吹が、時代を超えて伝わってきます。平日の午前中など、少し余裕のある時間帯に足を運ぶのが、作品との対話を楽しむコツかもしれません。
日本の伝統美と写真芸術の粋を感じるひととき
西洋美術の輝きに触れた後は、東洋の繊細な造形美にも目を向けてみませんか。神泉の戸栗美術館では、2019年12月19日まで「たのしうつくし 古伊万里のかたちI」が開催されています。佐賀県有田で作られた江戸時代の磁器、いわゆる「古伊万里」が約100点も集結しており、その多様なモチーフや形からは、当時の職人たちの遊び心と高い技術力が伺えます。
また、二子玉川の静嘉堂文庫美術館では、2019年12月15日まで「名物裂と古渡り更紗」展が行われています。茶道具を大切に包む「仕服」に使われた名物裂(めいぶつぎれ)や、海を越えて日本にもたらされたエキゾチックな更紗(さらさ)は、茶の湯文化の奥深さを象徴しています。派手さはありませんが、布一枚に宿る歴史と洗練された色彩感覚には、背筋が伸びるような心地よさがあります。
一方、現代的な視覚体験を求めるなら、学芸大学のブリッツ・ギャラリーで開催中のノーマン・パーキンソン展がおすすめです。20世紀のファッション写真を牽引した彼の日本初個展では、オードリー・ヘップバーンやデヴィッド・ボウイといった伝説的スターのポートレートを2019年12月22日まで無料で楽しむことができます。時代を彩ったアイコンたちの輝きは、今見ても全く色褪せていません。
版画の迷宮と三島由紀夫の宇宙を探る
横須賀美術館で開催されている「版画ワンダーワールド」も見逃せません。2019年12月22日まで、明治から現代に至る約160点の作品を通して、版画の表現の広がりを体験できます。木版やエッチングといった技法の解説だけでなく、原版や試刷などの貴重な資料も公開されており、一枚の絵が完成するまでのクリエイティブな舞台裏を知ることができる、非常に知的好奇心を刺激する内容です。
さらに、2019年11月30日には山中湖の三島由紀夫文学館で、開館20周年を記念した特別なフォーラムが開催されます。詩人の高橋睦郎氏による講演や、舞踏家による圧巻のパフォーマンスを通じて、戦後日本を象徴する作家・三島由紀夫の多面的な魅力に迫ります。予約制のイベントですが、富士の麓という静謐な環境で、彼の文学的宇宙に浸る時間は、この冬一番の贅沢な体験になるに違いありません。
これら多種多様な展覧会は、私たちの感性を豊かにし、日常に彩りを添えてくれます。冬の寒さが本格的になる前に、美術館という特別な空間で至福のひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。どの展示も開催期間が限られていますので、スケジュールを立てて早めに訪問することをお勧めします。私自身、コートールド展でのセザンヌとの再会が今から楽しみでなりません。
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