インターネット上の購買履歴やライフスタイルに関するデータは、現代において「現代の石油」とも称されるほど価値が高まっています。2019年11月13日現在、こうした個人のデータを安全に預かり、本人の同意に基づいて企業へ提供する「情報銀行」という新たな仕組みが大きな注目を集めています。
これは、個人が自らの意思でデータの提供先を選び、その対価としてポイントや便利なサービスを受け取れるという日本独自のビジネスモデルです。これまでは巨大IT企業が独占しがちだったデータを、個人の手に取り戻す「データ民主化」の一歩としても、SNSを中心に「怪しいけれど興味深い」と話題を呼んでいます。
実際に使ってみて分かった!情報銀行の驚きのスピード感
2019年7月にサービスを開始した電通グループの「MEY(ミー)」というアプリを、さっそく筆者も体験してみました。スマートフォンの操作は非常にシンプルで、氏名や住所などの基本情報を登録するのに要した時間はわずか2、3分ほどです。登録を終えると、すぐに企業からの「オファー」が画面に届きました。
「マイカー派ですか?」といったアンケート形式の質問に回答し、規約に同意するだけで、あっという間に合計90ポイントが付与されました。1ポイントは約1円の価値があるため、10分足らずで90円相当の報酬を得たことになります。これを高いと見るか安いと見るかは分かれますが、スキマ時間の活用法としては非常に合理的でしょう。
運営元のマイデータ・インテリジェンスによると、2019年10月には登録者数が10万5千人を突破したそうです。新しいサービスに対して慎重な日本人がこれほど動いているのは、情報の提供が「本人の承諾」を大前提としている安心感があるからに他なりません。
単なるポイント還元を超えた「パーソナライズ」の魅力
情報銀行の真の価値は、単なる金銭的な報酬だけではありません。例えば、健康診断の結果と日々の食事の購買データを掛け合わせることで、自分専用の健康指導を受けられるようになります。甘いものを買いがちな人に「今の食生活はリスクが高いですよ」と具体的にアドバイスしてくれる、専属コーチのような存在です。
2022年には国内のビッグデータ分析市場は1兆5000億円規模に成長すると予測されています。三菱UFJ信託銀行も2020年4月のサービス開始に向けて準備を進めており、金融機関ならではの信頼性を武器に、より高度なデータ活用を目指しています。
ここで言う「パーソナライズ」とは、膨大な情報の中から自分に最適なものだけを抽出してくれる技術を指します。無駄な広告に悩まされる日常から解放され、本当に必要な情報だけが届く心地よさは、これからの時代のスタンダードになるでしょう。
副業マッチングも!広がる情報銀行の活用フィールド
情報銀行の可能性は、さらに意外な分野へも広がっています。富士通は2019年9月に「丸の内データコンソーシアム」を設立し、預かったスキル情報を活用した「副業マッチング」の実証実験を行っています。これは、自分の能力をデータとして提供することで、最適な仕事のオファーをもらえる仕組みです。
2020年2月には本格的なマッチング開始が予定されており、働き方改革が叫ばれる中で「キャリア形成のプラットフォーム」としても期待されています。大企業から直接仕事の依頼が届くことは、個人にとってポイント以上の大きなインセンティブになるはずです。
私自身の考えとしては、この仕組みが成功する鍵は「透明性」と「納得感」に尽きると確信しています。いくら報酬が魅力的でも、情報の流れが不透明であれば誰も利用しません。しかし、情報の使い道を自分でコントロールできるこの仕組みは、現代社会の不安を解消する鍵となるでしょう。
今後、イオン系のフェリカポケットマーケティングなどが参入することで、日常の買い物と密接に関わるサービスも増えていくはずです。どれだけ多くの人が「この銀行なら預けてもいい」と思える信頼を築けるかが、日本のデータエコノミーの成否を分けることになるに違いありません。
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