ローマ教皇が挑む「中国」という巨大な壁。バチカンの歴史的な接近は平和への一歩か、それとも危険な賭けか?

2019年11月26日、日本での滞在を終えたローマ教皇フランシスコが帰国の路につきました。核兵器の根絶と平和を訴え続けたその姿は、日本中を深い感動で包み込みました。しかし、今回の来日の裏側で、実はもう一つの歴史的なシナリオがささやかれていたことをご存じでしょうか。それは、教皇が中国を訪問するという驚くべき計画です。

現在、バチカンと中国の間には正式な国交が存在しません。共産党が統治する中国は「無神論」を掲げており、宗教活動には厳しい制限があるからです。SNS上では「信教の自由がない国へ教皇が行くのは、圧政を肯定することにならないか」という懸念の声が上がる一方で、「教皇の対話姿勢こそが、今の冷え切った国際情勢に必要だ」と期待する意見も噴出しています。

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二分される教会と「司教任命権」という難題

中国のカトリック界は、政府の管理下にある「公認教会」と、教皇への忠誠を守り続ける「地下教会」という二つの勢力に分裂しています。当局による地下教会への監視や弾圧は、国際的にも大きな問題となってきました。この深い溝を埋めるべく、2018年9月22日、両者は司教の任命権をめぐって歴史的な暫定合意に達しました。

「司教」とは、一定の地域にある教会を監督する高い権限を持つ聖職者のことです。これまでは中国政府が勝手に任命していましたが、今後は政府が候補を選び、教皇がそれを承認するという妥協案が探られています。これは、バチカンが中国の内情に歩み寄ることで、信徒たちの安全と信仰を守るための苦渋の決断ともいえるでしょう。

バチカンには、欧州で信徒数が伸び悩むなか、膨大な人口を抱えるアジア、特に中国での布教を広めたいという戦略的な思惑もあります。しかし、習近平指導部は「宗教の中国化」を掲げ、あらゆる信仰を共産党の指導下に置こうとしています。この接近は、バチカンにとって自らの権威を傷つけかねない「虎穴に入る」ような危険な賭けなのです。

外交のチェス盤:台湾の孤立とバチカンの深謀遠慮

もし和解が進めば、バチカンは欧州で唯一外交関係を持つ台湾と断交する可能性が出てきます。これは、台湾を国際社会から孤立させたい中国の野心に合致するものです。それでも私は、この対話の動きを長期的な視点から支持します。中国をただ外側から批判して傍観するだけでは、現地の信徒たちが置かれた過酷な状況は何一つ変わらないからです。

バチカンには2000年の歴史があり、どんなに強大な権力であっても、内側から少しずつ社会を変革してきた自負があります。短期的には中国に利用されるリスクがありますが、中長期的に見れば、教皇との「つながり」が中国国内に浸透することで、強権体制の窓を少しずつこじ開けていく力になるはずです。

2019年11月現在、この攻防はまだ始まったばかりです。宗教と政治が複雑に絡み合うこのチェスのような外交戦が、アジアの、そして世界の秩序をどのように塗り替えていくのか。平和を祈る教皇の次なる一手に、私たちはもっと関心を持つべきではないでしょうか。

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