アメリカやカナダのフィットネス業界に、今まさにテクノロジーの革命が押し寄せています。クラウドと最新デバイスを融合させた「コネクティッド・フィットネス」という新ジャンルが、スタートアップ企業を中心に急速な広がりを見せているのです。スマホアプリによる動画配信はすでに競争が激化する「レッドオーシャン(血で血を洗うような激戦区)」ですが、革新的なハードウェアを掛け合わせることで、全く新しい体験価値が生まれています。
2019年12月02日現在、全米のフィットネス市場は約2兆7000億円という巨大な規模に成長しています。しかし、利用者の多くは自宅でスマホの小さな画面を眺め、専門的な助けもないまま不十分なトレーニングを行っているのが現状でしょう。こうした「不完全な宅トレ」に終止符を打つべく立ち上がったのが、ニューヨークを拠点とするスタートアップ「ミラー」のブリン・プットナムCEOです。
SNS上でも「鏡がインストラクターになるなんて未来的すぎる!」と大きな話題を呼んでいます。プロのバレエダンサーとしての経歴を持つ彼女が考案したのは、姿見そのものをディスプレイ化した「スマートミラー」でした。これは単なる鏡ではなく、カメラやスピーカー、マイクを内蔵した究極の対話型デバイスなのです。自分の動きを確認しながら、トップアスリートによる視覚的なフィードバックを自宅で得られるようになります。
本物のプロが鏡の中に!サブスクで進化するワークアウト
2018年09月にサービスを開始したこのスマートミラーは、まさに次世代のホームジムと呼ぶにふさわしい機能を備えています。画面には元メジャーリーガーや超一流のダンサーが登場し、利用者の動きをリアルタイムで解析して、フォームの修正や激励のアドバイスを飛ばしてくれます。Apple Watchなどの心拍計と連動すれば、自分の限界に合わせた最適な負荷調整も可能になるでしょう。
また、月額39ドルのサブスクリプション(定額制)を採用している点も非常に現代的です。運営側はユーザーに長く続けてもらうため、ヨガやボクシングなど多彩なメニューを24時間オンデマンドで配信するだけでなく、同じクラスを受ける仲間と成果を競い合える「ソーシャル機能」も充実させています。孤独になりがちな自宅での運動を、コミュニティの力で楽しい習慣へと昇華させているのです。
気になるコスト面ですが、初年度に約2000ドルが必要となるものの、シリコンバレーの高価な高級フィットネスジムに通うよりはるかに経済的だと言えます。私自身の見解としても、移動時間ゼロで最高峰の指導を受けられる利便性は、現代人のタイパ(タイムパフォーマンス)を劇的に向上させるでしょう。今後、専属トレーナーによる1対1の個別指導が展開されるのも期待が高まります。
水泳もスマート化!199ドルの「魔法のゴーグル」が登場
一方、カナダの「フォーム」社は、これまでデジタル化が難しかった水泳の世界に変革をもたらしました。彼らが開発したのは、泳いでいる最中にタイムや距離、ストローク数をレンズ上に表示できるスマートゴーグルです。かつてインテルに企業売却した経験を持つダン・アイセンハートCEOは、スマートグラス(眼鏡型ウェアラブル端末)の知見をこの小さな水中メガネに凝縮させました。
これまでは、壁にタッチして時計を見るまで自分のペースを知る術はありませんでした。しかし、このゴーグルがあれば、100メートルあたりの速度や消費カロリーがリアルタイムで視界に浮かび上がります。オリンピック金メダリストのダリアン・タウンゼンド氏も、1ストロークごとに即座にフィードバックが得られるこのデバイスを、練習方法を根底から変える「革命」だと絶賛しています。
2019年現在の価格は199ドルと手に取りやすく、世界各国への出荷が始まっています。さらに同社は心拍計測の雄であるポーラー社と提携し、心拍数に基づいたより精密なトレーニング分析も実現しました。カメラや映像技術に強みを持つ日本企業にとっても、この広大なフィットネス市場は大きなビジネスチャンスが眠っているはずだと私は確信しています。
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