高知県いの町に拠点を置く土木建設業者「国友商事」が、本業の枠を超えた驚きの挑戦で注目を集めています。その主役は、地域の山々に自生する希少な「山茶」を活用した高級茶葉の生産事業です。2019年12月03日現在、同社が丹精込めて作り上げるお茶は、国内の流行発信地のみならず、遠く海外からも熱視線を浴びる存在へと成長を遂げました。
物語の始まりは、1998年に逝去された先代社長が遺した「お茶でもやってみないか」という一言でした。アパレル大手から帰郷して父の介護にあたっていた国友昭香社長は、大学で学んだ生物薬学の知識を武器に、近隣の山に眠る山茶の可能性を徹底的に調査しました。自然のままに育つ「山茶」は、一般的な栽培品種にはない力強い生命力と独特の香りが大きな魅力です。
国友社長は、自生する茶の木の手入れや苗の植樹を行い、2006年には念願の加工工場を設立しました。翌2007年から本格的な販売を開始したその商品は、土佐弁で「こだわる」を意味する「りぐる」から「りぐり山茶」と名付けられています。その名の通り、化学肥料や農薬を一切使わない有機無農薬栽培と、伝統的な釜いり製法に徹底してこだわりました。
普及品でも100グラム1080円という強気の価格設定ですが、SNS上では「五臓六腑にしみわたる滋味深さ」「本物のお茶の香りに癒やされる」と絶賛の声が相次いでいます。この評判は瞬く間に広がり、首都圏の高級スーパーや感度の高いカフェ、さらにはインターネット通販を通じて、本物志向の消費者から圧倒的な支持を得るに至ったのです。
驚くべきことに、その人気は国境をも越えています。インスタグラムなどのSNSを通じて、欧州の芸術家たちから直接注文が入るほか、2016年からはカナダ・バンクーバーのこだわりカフェとの定期取引も始まりました。世界中の人々が、日本の山間にひっそりと息づく「安心・安全」な山の恵みに、かつてない価値を見出しているのでしょう。
特筆すべきは、この農業事業が会社の雇用を守る「経営の柱」として機能している点です。土木工事の仕事にはどうしても繁閑の差が生まれますが、国友商事では社員全員が多技能工として活躍しています。毎年5月の茶摘みシーズンには、全社員が現場を飛び出し茶畑へ向かいます。こうした多角化により、地域インフラを守る土木作業員の通年雇用が可能になりました。
2019年5月期の決算では、農業部門が1000万円を売り上げています。国友社長は、この数字を3000万円まで引き上げることで、公共投資が減少傾向にある過疎地の建設業を盤石なものにしようと描いています。地方創生の鍵は、既存のインフラ維持能力と、地域資源を活かした高付加価値ビジネスの融合にあると確信させられる、実に見事な戦略ではないでしょうか。
現在、会社には娘の真央さんも加わり、次世代へのバトンタッチも見据えています。国友社長が情熱を持って蒔いた「山茶」という種は、過疎化が進む町に希望という名の大きな実を結ぼうとしています。建設業が農業を支え、農業が建設業の未来を照らす。この美しい循環こそが、これからの日本の中山間地域が目指すべき理想の姿なのかもしれません。
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