2019年6月21日、北海道大樹町は、ロケット発射場の整備を目指す新たな企画会社「北海道航空宇宙企画」(HAP)を町内に設立しました。これは、これまで国主導で進められてきた種子島(鹿児島県)や内之浦(鹿児島県)などの発射場整備とは異なり、自治体が主体となって推進する、日本初の画期的な取り組みとなる見込みです。HAPは、2023年を目標に、具体的な整備案を策定していく計画です。
新会社HAPの設立には、大樹町が200万円を出資し、酒森正人町長が社長に就任いたしました。さらに、帯広信用金庫や帯広商工会議所、十勝毎日新聞社といった地元の金融機関や経済団体も、取締役や監査役を派遣し、地域全体での支援体制が構築されています。また、北海道庁や帯広市、北海道経済連合会、さらには日本政策投資銀行といった広域の行政機関や金融機関も顧問として加わる見通しで、このプロジェクトへの期待の大きさが伺えます。
この計画の背景には、実業家の堀江貴文氏が出資するロケット開発会社、インターステラテクノロジズ(IST)の目覚ましい活躍があります。ISTは、同年5月4日に、大樹町の既存施設から宇宙観測用の小型ロケット**「MOMO(モモ)」3号機の打ち上げに成功。日本の民間企業が単独で開発したロケットとして、初めて高度100キロメートルの「宇宙空間」に到達するという快挙を達成しました。この成功は、国内の宇宙開発分野で大きな話題となり、「#MOMO3号機」といったハッシュタグとともにSNSでも熱狂的な反響が寄せられました。
ISTは、モモ3号機の成功に続き、人工衛星を搭載できる本格的なロケット「ZERO(ゼロ)」の開発を加速させています。ゼロはモモの約30倍の重量があり、ISTは2023年を目途にその打ち上げを目指しているのです。次の打ち上げとなるモモ4号機は今夏に予定されており、大樹町内では既にロケット本体の製造が進められています。稲川貴大社長は「7合目まで仕上がってきた」と開発の進捗に自信を覗かせました。4号機では、折り紙の飛行機を宇宙空間から放出する試みや、燃料のエタノールに和歌山県の酒造会社の日本酒を混ぜるといった、遊び心のあるユニークな企画も盛り込まれているようです。
民間ロケットビジネスに必要な「高頻度打ち上げ」の壁
現在ISTが使用している発射場は、元々、防衛省が対潜哨戒機(たいせんしょうかいき)のエンジンテストに用いていた施設を転用したものです。1.5メートルほどの厚いコンクリート舗装が施されており、一部拡張工事をすれば、より大型のゼロの打ち上げにも耐えられる強度は備わっています。しかし、この施設は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の施設と近接しており、人工衛星の打ち上げを受注し、ビジネスとして成立させるために必須とされる月2~3回という高い頻度でロケットを打ち上げることが難しい状況です。
その理由として、ロケットを打ち上げる際には、安全を確保するために設定される「保安距離(ほあんきょり)」内にJAXAの施設が含まれてしまうため、打ち上げの度にJAXA施設の活動に支障が出てしまう点があります。このため、ISTが目指すゼロの商用化、すなわち衛星打ち上げビジネスを軌道に乗せるためには、周辺施設から十分な距離を確保した、新たな発射場を整備することが喫緊の課題となっていたのです。
新しく整備される発射場は、ISTだけでなく、和歌山県での発射場建設を目指すスペースワンなど、他の民間ロケット開発会社による利用も視野に入れています。スペースワンが建設を目指す和歌山県の予定地は、周辺の空域や海域における飛行機や船舶の交通密度が高く、ロケットを打ち上げるのが難しい時期が発生する可能性があります。HAPが整備する大樹町の発射場が、このような時期の打ち上げ需要を取り込むことができれば、日本の民間ロケット打ち上げビジネス全体の自立に向けた大きな一歩となるでしょう。
自治体が主導する発射場整備は前例がなく、その実現には乗り越えるべきハードルが多数存在しています。特に、数十億円とも言われる整備コストをどのように捻出・負担していくかが最大の課題です。今後は、国や北海道、そして民間の活力をいかにして結集し、この大樹町を小型ロケット打ち上げの一大拠点**へと発展させられるかに、多くの人々の関心が集まります。日本の宇宙ビジネスの未来を切り拓く、大樹町の挑戦に期待が高まるばかりです。
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