日本生産性本部は2019年11月13日、2018年度における日本の名目労働生産性に関する最新の調査結果を公表しました。発表によると、働き手1人が1時間あたりに生み出す成果を示す指標は4853円となり、前年度と比較して0.2%のマイナスを記録しています。この数値が減少に転じるのは、2011年度以来、実に7年ぶりの出来事として注目を集めているのです。
ここでいう「名目労働生産性」とは、物価変動を考慮せず、実際に生み出された付加価値(利益やサービスの対価など)を労働時間で割った数値を指します。2013年度以降、景気の緩やかな回復基調に伴って過去最高を更新し続けてきたこの指標ですが、2018年度は一転して踊り場を迎えた形となりました。この変化は、日本の雇用環境が大きな転換期にあることを示唆しているでしょう。
今回の低下における大きな要因は、深刻な人手不足に直面しているサービス業などの現場で、短時間労働者が急増したことにあります。多くの企業が働き手を確保するために、高齢者や女性といった多様な層をパートタイム形式などで積極的に採用しました。しかし、労働者数が増加した一方で、消費の伸び悩みにより全体が生み出す「付加価値」の成長が追いつかなかったことが、1人あたりの効率を下げる結果を招いたのです。
SNS上では「生産性向上と言いつつ、現場は疲弊している」「単価の低い仕事に人手を取られすぎているのでは」といった懸念の声が上がっています。また、物価変動の影響を除いた「実質労働生産性」については前年度から横ばいを維持していますが、それまで3年連続で上昇していた勢いが止まった事実は重く、働き方改革の真価が問われる局面に来ているといえるでしょう。
今後の展望:直近の四半期データに見る回復の兆し
もっとも、悲観的な材料ばかりではありません。四半期ごとの推移を細かく分析すると、2018年10月から12月期から、直近の2019年4月から6月期にかけては、前期比でプラスの傾向を維持しています。年度単位では足踏み状態となったものの、足元の経済活動においては、生産性を再び引き上げようとする力強い動きが継続していると判断できるはずです。
編集者の視点としては、単に「効率が落ちた」と嘆くのではなく、多様な働き手が社会に参加し始めた「産みの苦しみ」の時期だと捉えるべきだと考えます。短時間労働者のスキルアップ支援や、AI・ITツールの活用による業務効率化を並行して進めることが不可欠です。それこそが、労働力不足を克服し、持続可能な日本経済を再構築するための唯一の道筋になるのではないでしょうか。
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