2019年10月30日、財務省が発表した最新の貿易統計によって、日本の食卓に欠かせない牛肉の輸入量に異変が起きていることが明らかになりました。同年9月の牛肉輸入量は5万525トンにとどまり、前年の同じ時期と比較して3.3%のマイナスを記録しています。驚くべきことに、これで5カ月連続の前年割れとなっており、輸入牛肉市場には冷ややかな風が吹き抜けているようです。
今回の落ち込みの背景には、日本の輸入牛肉市場で圧倒的な存在感を誇るオーストラリア産とアメリカ産の不振があります。国別で見ると、オーストラリア産は前年比8%減の2万4672トン、アメリカ産にいたっては16.1%減の1万7787トンと大幅に数字を下げました。かつては市場の約92%を占めていた両国のシェアも、2019年9月には84%まで後退しており、勢力図の変化が鮮明になっています。
TPP発効後の供給過剰と関税格差がもたらす影響
なぜ、これほどまでに牛肉の輸入が停滞しているのでしょうか。商社の担当者によれば、2018年末からの環太平洋経済連携協定(TPP)発効を見越し、2019年の年明けに輸入を急いだ反動が出ているとのことです。TPPとは、参加国間での関税を撤廃・削減し、自由な貿易を促進する枠組みを指します。期待感から在庫を積み増したものの、実際の国内消費が追いついていないのが現状と言えるでしょう。
また、アメリカがTPPに参加していない点も大きな鍵を握っています。日豪経済連携協定(EPA)によって先行して関税が下がっていたオーストラリアに対し、アメリカ産は依然として高い関税率が適用されるなど、不利な状況が続いてきました。こうした国際情勢や在庫のダブつきにより、市場関係者の間では「今後もしばらくは輸入が低水準で推移するのではないか」という慎重な見方が強まっています。
一方で、牛肉とは対照的に、豚肉は13.3%増、鶏肉は33.2%増と、他の食肉の輸入量は驚異的な伸びを見せています。SNS上でも「最近は牛肉よりもリーズナブルな豚や鶏を選んでいる」といった声が目立っており、家計の防衛意識が反映されているのかもしれません。牛肉の価格安定や消費拡大には、TPPの恩恵が一般消費者までしっかりと還元される仕組み作りが急務であると私は考えます。
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