日本の軽自動車界を牽引してきたスズキが、今まさに歴史的な岐路に立たされています。2019年12月04日現在、同社が発表した2019年04月から09月期の連結決算は、純利益が前年同期比で42%も減少する793億円という厳しい結果になりました。実に10年ぶりとなる減益の波が、盤石と思われていたスズキの経営を直撃しているのです。
不調の最大の要因は、これまで「スズキの独壇場」とされてきたインド市場の急減速にあります。現地子会社であるマルチ・スズキの営業利益はなんと7割もダウンしており、生命線とも言える市場でブレーキがかかってしまいました。SNS上でも「あのスズキがインドで苦戦するなんて信じられない」といった驚きの声が、投資家や自動車ファンから相次いで投稿されています。
インド市場を襲ったのは、複合的な経済の停滞です。2019年10月の新車販売台数は前年同月比で5%減の35万台にとどまり、まる1年以上もマイナス成長から抜け出せずにいます。重い税負担に加え、自賠責保険の値上げや燃料費の高騰、さらに金融機関によるローン審査の厳格化が重なり、現地の消費者はすっかり財布の紐を固く締めてしまいました。
環境規制の壁と迫りくるライバルの足音
経済面だけでなく、制度の変化も大きなハードルとなっています。インド政府は深刻な大気汚染を解消するため、2020年04月から「バーラト・ステージ6(BS6)」という非常に厳しい排ガス規制を導入する予定です。これは欧州の基準に匹敵する高度な浄化技術を求めるもので、低価格を武器にしてきたスズキにとっては、車両価格の上昇を招く大きな試練と言えるでしょう。
さらに、インド市場の将来性を見込んだ世界中のメーカーが攻勢をかけています。2019年には韓国の起亜自動車や中国の上海汽車が相次いで参入し、2020年にはフランスのグループPSAも市場に名乗りを上げます。これまで市場の半分を握ってきたスズキの牙城を崩そうと、最新のSUVをひっさげた強力なライバルたちが、虎視眈々とシェアを狙っているのです。
こうした絶体絶命のピンチに対し、スズキが繰り出した「次の一手」がトヨタ自動車との資本提携でした。2019年08月末に発表されたこの提携は、まさに生き残りをかけた戦略的な結婚と言えます。スズキはトヨタが誇る高度な「電動化技術」を手に入れることで、厳しくなる環境規制をクリアしつつ、次世代のモビリティ開発へと舵を切る決断をしました。
「最後のフロンティア」アフリカで見せる反撃のシナリオ
トヨタとの提携は、単なる技術協力に留まりません。両社はインドでの共同開発や、お互いのブランドで車を生産する「OEM供給」を通じて、徹底したコスト削減に乗り出します。さらに驚くべきは、両社の視線がインドの先にある「アフリカ市場」に向いていることです。2019年03月期に約125万台規模だったこの巨大市場は、今後の成長が最も期待される場所です。
スズキの強みである小型車と、トヨタの販売網や電動化ノウハウが組み合わさることで、アフリカ全土を席巻する準備が整いつつあります。編集者としての私の視点では、この提携はスズキが「インド一本足打法」から脱却し、真のグローバル企業へと脱皮する絶好の機会だと確信しています。伝統の軽自動車技術が世界を救う、そんな未来が見えてくるようです。
2020年に創立100周年という記念すべき節目を迎えるスズキ。東京モーターショーの壇上で鈴木俊宏社長が掲げた「小さなクルマでワクワクを届ける」という信念は、逆境の中でより一層輝きを増しています。老舗メーカーが逆境をバネにどのような変身を遂げるのか、市場は固唾を飲んでその行方を見守っています。スズキの第2の創業は、今ここから始まるのです。
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